6.ブチ壊すのさ全てを 惜しくない、と言ったのならそれは嘘になる。 見上げてくる目、そこに在る憧憬と尊敬の色。 懐かない動物が懐いた時のような、充足感。 その全てがなくなるかもしれない。 散って、壊れて、二度と戻らないかもしれない。 それを思うと、踏み出すのは躊躇われる。 けれど。 失うリスクを背負ってまでも、手に入れたいものがあるのだ。 全てを壊してでもこの手にしたいと、そう思ってしまった。 理由も理屈も無く、ただ欲しい、と。 考えようと思えば幾つでも理由なんて挙げられるだろうけれど。 そんなものに意味がないことなど、榛名自身が一番よく理解していた。 欲しくなった。 ただそれだけ。 子供のような考えだけれど、それしかないのだから仕方ない。 理性を押し流して本能がそう思う。 壊れてもいい、今がなくなるのは惜しいけれど。 このままでいられないのは、もう何にも代え難い事実なのだから。 「レン」 「あ、はる なさんっ」 呼ぶ声に、三橋が振り返る。 榛名の姿を認めた途端、その顔に嬉しそうな笑みが広がった。 三橋に尻尾でもあったのなら、嬉しげにぶんぶんと振られていたに違いない。 これを、見られなくなるかもしれないのは。 正直、惜しいけれど。 全てを壊してやる、そう決めた心は揺るがない。 「レン、オレさ……」 全てブチ壊して、また築く。 新たな関係を。 握った掌に汗が滲んで、榛名は三橋に気付かれないようにそっと苦笑した。 さあ、勝負はこれからだ。 END |
榛名さん、MK5(マジで告白5秒前)。 UPDATE 2005/6/16 |