11.触れたらこわれるし 触れなきゃこわれるし 拗ねた子供の相手は面倒だ。 いじけてむくれて、でも構ってやらなきゃますます意固地になる。 子供、ならまだマシだ。 デカイ図体で拗ねられた所でカワイクナイし。てっかむしろ殴りたい気分満々だし。 「なーあー、みゃあってよー」 というワケで。 猿野天国、只今図体も態度もやたらデカイ子供の相手中である。 ベッドに寝転んで天国に背を向けているのは、みゃあこと御柳芭唐だ。 この、攻防とも言えない不毛なやり取りはかれこれ30分程続いている。 いや、やり取りというには些か語弊がある。 何故なら言葉を発するのは天国ばかりで、御柳はもうずっとぴくりともせずにベッドに寝転んでいるだけなのだ。 猫なで声を出してみても、拗ねたように呼んでみても、呆れてみても怒ってみても、無駄だった。 何をしても暖簾に腕押し、柳に風。 つまり、無反応。 いい加減呼びかけることにも疲れてきて、天国はベッドの端にぐでんと頭を乗せた。 大体天国とて気が長い方ではないのだ。 むしろ短い、という部類に属する。 それにお世辞にも寛大とは言い難い。 そんな同士なのに、よくもまあ付き合いが続いているよなあ、と。 何だか他人事のような気分で考えた。 沢松辺りに言わせると、似ているから衝突が多い代わりに、似ているからこそ付き合いが続いているんだろ、とのことらしい。 矛盾しているような響きの言葉に、勿論天国は素直に頷く筈もなく。 むしろそんなこと微塵も考えていなかったので、その発言をした後の沢松には蹴りをプレゼントしておいた。 自分と御柳が似ている、なんて。 思ったこともなかったし、それを聞かされた今でさえ思いもしない。 冗談ぬかせ、と鼻で笑い飛ばせる。 その場に御柳が居たとしたら、おそらくは天国と同様の反応を示していたに違いなかった。 ……あれ? 今何かおかしいトコロがあった気がする、と首を傾げながら天国は御柳の隣りにごろんと寝転がった。 丁度御柳と背中合わせになるように。 悔しいことに御柳の使っているベッドは天国のそれよりもずっと広く高価そうな代物で、男子高校生が二人で並んで寝ることなど余裕なのだ。 御柳の背中と天国の背中、その真ん中が掠めるように触れた。 「疲れたからちっと寝るー」 押してもダメ、引いてもダメ、それならしばらく放っておく。 そう結論を出した天国は、己の腕を枕代わりに頭の下に置き目を閉じた。 相変わらず御柳からの返事はない。 けれど焦りも怒りもなかった。 それが何故なのかは、自分でもよく分からなかったけれど。 起きる頃には機嫌直ってるといいなあ、面倒だから。 そんなことを考えながら、ゆるゆると眠りに沈んでいく。 少しだけ触れているぬくもりが、余計眠気を誘発した。 安心するのは多分、大切な暖かさだからだろう。 目が覚めた時、御柳に抱え込まれていて思わず笑ってしまうのは。 数時間後の、ゆるぎない事実。 END |
久々に短い文でございます。 しかし自作お題は当初こういった感じの、 日常の一端を切り取ったようなごく短い文で行う予定でした。 (勝手に自分の中だけでは) しかし思いついたネタが長かったり、 思い入れがあるせいで(題にも話にも)長くなったり。 これからも好き勝手やるかと思いますが、 大好きという気持ちだけは大前提に頑張ります! (話そのものに対してはないんかい) UPDATE 2005/12/21(水) |