6.花は咲くでしょう。また、君の傍に 銀さんがベランダの隅に転がっていた鉢に何かを植えたらしいのは、多分一週間ぐらい前だったと思う。 気付いたのは、洗濯物を干そうとベランダに出た時のことだった。 それまで雑草の温床と化していた、何に使われるでもなかった鉢。 だけど、その時は茂っていた雑草が全て引き抜かれて、鉢の周囲に散らばっていたからすぐに気付いた。 まあ、この万事屋に置いてあるのは基本銀さんの持ち物だし?(神楽ちゃんやら定春やらが来てからそうでないものも増えてるけど。ついでに僕の持ち物もあったりするけど) それをどうこうしようと意見する気はないけどさ。 あ、金銭に関わる問題は別だけど。 ともかく。銀さんが何をおっ始めようと構わないけど、後片付けくらいはちゃんとして欲しい所だ。 その時だって、引っこ抜いた雑草を片付けもしてなかったから結局僕が捨てたんだし。 放っといても良かったんだけど、あの人は放っておけば放っておいただけ何もしないから現状が悪化してくだけなんだ。 不器用な人じゃない筈なんだけどね。 …ていうか、僕に比べれば全然器用だと思う、あの人。 まあ極度の面倒くさがりだから、滅多なことじゃ動かないってだけで。 うわ、これって確実にダメな大人だな。ああいう人にはなっちゃいけないよな、うん。 まあ、そんなダメな人だったりするけど。 いざって時には頼りになるんだよね、悔しいことに。 普段はホント、ダメ大人だけど。 糖尿(予備軍)だってのに病的に甘いもの好きだし。 ……あれ、何だっけ? ああ、そうそう。 銀さんがベランダの鉢に何か植えてたって話。 あの面倒くさがりな人が珍しく気にしてるっていうか、ソワソワしてるっていうか、浮ついてるっていうかだったから、僕も何だか気になって。 何が咲くのかな、なんて少し楽しみになっていたりもして。 明日には咲くんじゃないだろうか、と思えるほどに蕾が大きくなっていた、そんな翌日。 つまり今朝。 それとなく銀さんに、何が咲いたのか聞いたら。 意外すぎる答えが返ってきた。 曰く、抜いてしまったと。 驚いた。 まさか最後の最後でこんなどんでん返しが待ってるとは予想だにしていなかった。 問い質したい気はあったけど、これで話は終わりだって雰囲気だったから、僕もそれ以上は追求できずに。 そりゃ銀さんの持ち物だから、どうこう言うつもりはないけどさ。 でも、ただ。 珍しく執着してたのにな、と。 そう思うと残念でならなかった。 ……それだけの話だ。 せっかく育てたのに、と思わないわけでもなかったけど。 銀さんが何だか妙にスッキリしたような顔をしているから、まあいいかなということにした。 相変わらずのどよんとした目を見ていると、複雑な心境にならざるを得なかったのはまあ、仕方ないと片付けることにして。 今度、家の近所で朝顔の種でももらってこようかな。 食べられはしないけど、手間もかからないし。 花を咲かせることってそんなに難しくないんだよって。 あの天パに教えてやらないとね。 END |
Cali≠gariお題「何が咲いた?」の続編。 というか新八視点。 万事屋家族で朝顔の観察日記をつけるとよいよ。 UPDATE 2006/5/8 |