まどろみの淵から、君に



◆P3・主人公・エンディング◆
※主人公名・水沢凌(みずさわしのぐ)


 空が蒼い。桜が舞っている。陽射しが暖かい。
 この街に戻ってきて、まだ一年も経っていないけれど。それでも確かに、季節は巡った。
 …春が、きた。

 視線を巡らせると、アイギスの泣き顔が目に映る。
 透き通る海のような色をした瞳から、はらはらと涙が零れ落ちる。その様子は綺麗だったけれど、哀しそうな顔をしてほしくなくて手を伸ばした。

「泣かないで」

 凌の言葉に、仕草に、アイギスは泣き顔のまま笑う。幼い少女のような表情に、凌もまたふっと笑った。
 指を濡らしたアイギスの涙は、暖かかった。
 今ここに「生きて」いるからこそ、流すことが出来るそれ。

 口を開くことさえ億劫な凌に代わるように、アイギスが言葉を紡ぐ。
 唄うように、祈るように、誓うように。耳に響く声は、心地よかった。
 腕が重い。脚に力が入らない。ゆるゆると力が抜けていく。
 凌の体調を察したのか、アイギスがゆっくり休んでと言ってくれた。皆すぐに来るから、と。
 うん、そうだね。大丈夫、分かってる。皆、約束を果たしてくれる。
 言いたかったけれど、まどろみに沈みかけの唇はそこまで動いてくれなかった。代わりに微笑ってみせる。
 皆の声が、足音が聞こえる。大切な人たちの。
 それを聞きながら、凌は抗いがたい眠気に負け、目を伏せた。


 あのさ、アイギス。言いそびれちゃったけど、俺も一つ、思い出したことがあるんだ。
 初めて、会った時のこと……十年前の、あの日のこと。
 あの時のことは結局断片的にしか思い出せなかったけど。それは俺が小さかったせいもあるだろうし、事故のショックのせいでもあるだろう。
 今更原因を究明したいとも、全てを思い出したいとも思わない。全部揃ってなくても、大切なものを忘れていないならそれでいいんだって。大丈夫なんだって。そう、思えるようになったから。
 …切れ切れの記憶の中にね、アイギス。君がいたよ。
 正確には、今と変わらない君と、あの頃はデスと呼ばれていた影みたいな姿の綾時とを。
 俺は、ちゃんと、二人を見てた。それを覚えてた。
 金色の髪と青い目の君を見て、小さかった俺はこう思ったんだ。天使だ、って。
 アイギスは、天使じゃなかったけど。俺にとってはそれよりもっと大切な、仲間で、命で、世界になった。

 この街に戻ってきて、とは言っても知り合いがいるわけでもなかったから初めて訪れるのと変わりはなかったけど、一年足らずで沢山の人と出会った。
 話をしたり、遊びに行ったり、優しくしてもらったり、時には別れたり、した。
 誰かと出会うことは、新しい世界と出会うことなんだろう。新たな世界と出会うことは、絆を紡ぐこと。絆を紡ぐことは、自分と世界を繋ぐ糸を広げ、強くすること。
 俺は、そんな風に思ってる。

 …アイギス、絆は切れないよ。一度結んだ絆は、どうやったって切れない。
 遠くに離れてしまっても、道が別れてしまっても。…たとえば、死んでしまったとしても。
 何があっても、絆は切れない。
 それは俺たちが生きていくのに必要不可欠で。目に見えなくても「生きる」人の支えになる。芯になる。

 別れの辛さに、哀しみに、耐え切れず膝を折る事だってある。痛みは、生きているからこそ感じるものだから。
 泣いて、悔やんで、激昂して。それでも、時が過ぎれば立ち上がる。
 忘れるのではなく、ちゃんと背負って。痛みにも哀しみにも向き合って、全てを自分のものにして。
 俺が絆を紡いできたのは、そんな人たちばかりだったよ。色んな人に会った。年齢も職業も価値観も、俺からはかけ離れてるような人とも知り合った。そんな人とでも、絆は紡がれた。
 優しくて、でも強い。世界の終わりが告げられても、諦めない。
 そんな人たちに会えて、良かったって。心から、そう思う。
 その中には勿論君だっているんだよ、アイギス。

 紡ぎ、繋ぎ、築いた絆は、決して消えない。
 ……たとえば俺が、いなくなっても。俺の心は消えないから。
 泣いても、落ち込んでも、怒ってもいい。いつかまた、笑ってくれるなら。

 タルタロスの頂上まで登った、あの日。
 ニュクス…それともデスって呼べばいいのかな…と対峙して命を使い切ってしまった俺が、それでも戻ってこられたのは。俺を世界に繋ぐ絆があるからだって。俺を呼んでくれる皆がいるからだって。
 そう、思うよ。
 皆と交わした約束が、俺を支えて生かしたんだ。

 俺はここにいる。大切な人たちと出会えた。生きてきた。

 難しいことなんて一つもないよ。
 生まれて、出会えて、良かった。
 そう思わせてくれて、ありがとう。


 ……俺は、ここにいる。


END






P3クリア記念〜♪

ってまた携帯でちみちみ打ってるわけですが。途中でノリノリになってしまって携帯にしたのを後悔してみたりしたわけですが(笑)
クリアしたくないよぅ、と足掻いてばかりもいられないので、意を決してガガッとやりました。
なんていうか…あの、これまたアビスと一緒ぢゃん。「世界は救われた(彼の犠牲と引き換えに)」なっ!()内は重要デスヨ。
アビスよかまだ救いはあったのかな〜と思うけど。でも結局主人公いなくなっちゃうじゃん!わぁぁぁん(涙)

というわけでエンディングを見てうちの主人公君こと水沢凌の妄想を書き散らしてみました。
凌君の見た命の答えは、こうでした。
私がアイギス好きなので贔屓みたいな。(天使発言とか)

ラスボス戦自体は苦労しませんでした。全員レベルMAXにしてたし。凌君に至っては全能の真球装備でしたし★
メサイアがね…受胎して一番に出してくれたのが全能だったんですよ。出した瞬間「イイ子っ!」とかガッツポーズ付きで言っちゃったし(笑)
でもその後零式装甲三連続でリセットしたけどさ! まあ全能出してくれたからそんなん別にいいですが。

コミュは四つがMAX達成ならず。でもまぁ頑張った方じゃないかな〜とか自画自賛してみる。
ちなみに残ったのは女教皇(風花)、女帝(美鶴)、正義(千尋)、皇帝(生徒会)でした。あう。

よし、二周目だな!(笑)


ラスボス戦、皆からの声がかかる場面で荒垣さんの声がちゃんとあったのが嬉しい……(感涙)(荒主なんだよね自分)
あれ、なんか最初の予定じゃ入らないはずだったらしいけど。(ファンブック参照)

※10/7追記。フェスのネタは色々仕入れてるので、主人公がこの後目覚めないのは知ってます。そのつもりりで書きました……しょぼ ん。


2007/10/06 ブログ小話
(UPDATE.2008/6/19)






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