【最終兵器彼女パロ】
(ちせ=三橋、シュウジ=榛名)




「一緒に…逃げるか」

「う、え?」


 何となく、口をついて出た言葉だった。
 深い考えも、まして計画などあるわけもない。
 ただ、衝動的にそう思って。思いつくまま声に出していた。

 逃げる。
 親も友人も。
 自衛隊も戦争も。
 全てから。

 間違っているのだと、誰かに詰られても責められても。
 耐えられなかった。
 ただでさえ小さな体をきゅっと縮めて泣く三橋が。
 戦う痛みを、人を殺す苦しみを。
 背負わなくてもいいはずだった荷物を背負わされ、泣きながらそれでも。オレにしか出来ないから、と泣くのが。
 我慢、出来なかったのだ。


「なあ、レン。逃げようぜ」

「ど、こに です、か?」

「どこでもいい。どこでもいーじゃん。オレ達のこと、知ってる奴がいない場所までさ」

「知らない、場所に、行く……?」


 泣き濡れた目のまま、三橋がことんと首を傾げた。
 榛名はそれに安心させるように笑いかけてやりながら、言葉を紡ぐ。

 泣かせたくない。泣かせたくないんだ。
 もう、これ以上。
 今までだって、充分過ぎるくらい傷ついて泣いてきた奴なのに。


「おう。なんつーんだっけ、ええと、駆け落ちってーやつだ」

「オ、オレの、父さんと母さん、もっ!」

「あ、何かそんなこと言ってたっけな」

「はいっ」


 何やら嬉しそうに目を輝かせる三橋に、思わず言ってること理解してるか、と問い詰めそうになった。
 そうしなかったのは、頷いた次の瞬間三橋の顔が曇ったからだ。
 眉を寄せ、淋しそうな顔になる。


「駆け落ち、だと……みんなに、会えなく、なっちゃうんです ね」

「……やっぱ、ヤか?」


 三橋がどれだけ周囲の人間に好意と信頼を寄せているか。
 それは榛名もよく知っている。
 親にも仲間にも友人にも。
 榛名が少しどころではなく大いに嫉妬するぐらいには。


「少し淋しいです、けど」

「……うん」

「オレ、榛名さんと、一緒に いたい」


 です、と。皆まで言わせずに榛名は三橋を抱きしめた。
 全てを捨てる。
 全てを捨てさせる。
 何気なく言った言葉に、酷く重い意味があった。
 けれど、三橋はそれに頷いてくれた。

 三橋を泣かせたくない。
 それだけを思った、榛名の我侭に。
 三橋は、頷いてくれたのだ。

 一緒に逃げよう。
 オレはオマエを、泣かせたりしないから。





END

 

 

 

うっかりまた書いてしまったサイカノパロです。
こう、もうちょっと切なくなる予定が……
何やらほのぼのテイストが多めに盛り込まれました(笑)
会話がね…何だかね……


Web拍手掲載期間→2005.10.19〜2005.11.15

 

 

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