【苦言を呈す改め程度の低い嫉妬の話】(ハルミハ前提榛名と阿部)


「オマエさぁ。そゆの、なんつーか知ってる?」

 ふ、と笑う。たぶん今の自分はイヤな奴全開な顔してるんだろうなあ、と思いながら。
 それでも、止められなかった。

「カカンショー、っつうんだよ」

 過干渉。
 その言葉を聞いた阿部が、苦い顔になった。
 思わず言ってしまったのは、嫉妬とか、そういう次元の話ではなくて。
 無性にムカついてしまったのだ。

 だって三橋は、バカだけど弱くなんてない。
 誰よりそれを分かっているはずなのに、ちっとも分かっていない。一番近くにいることを許された立場でありながら!
 すぐ泣くし、いっそ感心するほどに自信はないし、会話は上手くないし、いつだってきょどってるし。
 けど、それでも、三橋は守られるだけの器じゃない。
 三橋が三橋たる所以、たった一つの、三橋を支える芯。
 榛名をも感心させた、三橋の「投げること」への執念。

「俺はまあ、三橋はバカだとは思ってっけど。いんじゃねえの、野球バカって」

 というか、野球部に入って続けてるような奴らなんて、多かれ少なかれ野球バカだと思う。
 そうじゃなきゃ続けられないというか。
 無論自分だって傍から見れば立派に野球バカなんだろうなあ、とも分かっているし。

「俺はちゃんと三橋を尊敬してんだよ。な、それっておかしい?」

 挑戦的に笑って見せながら、言う。
 なんだかなあ。これ、ちょっとシュラバってヤツっぽくて複雑なんだけど。
 ふっとそんな事を考えて。
 ああやっぱり少しは嫉妬もあったかな、と今更ながらに思い至った。


 



Web拍手掲載期間→2009/12/20〜2010/10/4

 

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