捕食者


 どうして、ですか。
 問いは喉の奥で、ひそりと固まった。口に出す事など、できなかった。

「あ〜あ、なんでかねぇ」

 溜め息混じりの、言葉。
 返す言葉など、あるはずもない。それを聞きたいのは自分だと、投げ出すように思った。

「なんで、オマエなんかな〜」

 ずるい。
 狡い、ズルイ、そんな声で、そんな顔で。
 困り切ったようで、その実。
 その目がギラギラと、光を湛えているのを。
 目の前にいるのだから、見間違えようはずもなかった。
 この人は、生まれついての捕食者なのだ。
 当たり前のように、そんな事を考えた。
 誰より何より、上に立つ人。世界の底辺に位置する自分とは、何もかも違う人。
 それなのに、どうして。

「オマエが、いーんだよな」

 笑う、その顔にはいつものような余裕がなくて。
 それがまるで、撃たれたかのように。
 きりり、と胸を痛くした。


ハルミハ。



 

 


Web拍手掲載期間→2007.4.10〜2007.5.26

 

 

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