【シザーハンズパロ舞台裏】(おお振りver.)



「お疲れー」

「お、疲れさま、ですっ」


 着替えも終わって、三橋を迎えに行けば。
 三橋は未だ衣装のままで所在なげに椅子に座っていた。


「あれ。何だまだ手ぇ付けてんのか」

「あ、う、これ、一人じゃ外せな……」

「ああ、そか。そうだよな両手塞がってんもんな」

「ハ、イ……」

「しょげんなしょげんな。べっつにオマエの所為じゃねえじゃんよ」


 その特殊メイクよろしく着飾られた手は勿論のこと、着ている服も何だか面倒そうなデザインで。
 役柄逆じゃなくてよかった、などとのんびり考えてしまったりした。
 勿論榛名のそんな思考など露知らずの三橋は、おどおどきょときょとと落ち着かない様子で視線を巡らしている。
 いい加減そんな奇行にも慣れるほど三橋と付き合っている榛名は、苛立つ事も心配する事もなく問うた。


「何だよレン、どした?」

「あの、コレ、早く外してもらいた、い、なって」

「用事でもあんのか?」

「あ、や、ちがう、い、ます、けど」

「うん」


 いっそ挙動不審な程に視線を泳がせ、何故だか小さく縮こまる。
 萎縮する三橋が考えていることは、大体分かる。
 こんな事言って怒られないかな、呆れられないかな、嫌われないかな、といった辺りだろう。
 だからこんな時、榛名はただジッと待つ。
 震えて縮こまる三橋を、まっすぐに見据えて。

 やがて三橋はそろそろと顔を上げ、考えた事を口に出すのだ。
 根負けしたともとれるが、それだけではなく。
 どれだけ折れそうに見えても、流されそうに見えても、それでも三橋の芯が揺るがない。その証のように。


「オ、オレ、榛名さんと、一緒、に。帰りたい、なって、思っ……」


 ハサミの飾りがついた手では、服を握り締めることも出来ずに。
 それでも、逃げる事もなく三橋はぽつりぽつりと、言い切った。
 語尾が消えているのはまあ、大目に見てやることにする。

 三橋の言葉を引き出せた榛名は、満足そうに笑い。
 手を伸ばして、ぐしゃぐしゃと頭を撫でてやった。
 色素の薄い三橋の髪は、触り心地がいい。


「心配しねーでも、待っててやるよ」


 告げたら、三橋はまるで異国の言葉を聞いたかのような顔で幾度か瞬きをして。
 その顔が子供にしか見えず、榛名は耐え切れずに声をあげて笑った。



END

 

 

 


Web拍手掲載期間→2007.1.4〜2007.2.10

前回拍手文の撮影舞台裏。
ナチュラルにいちゃつきー。

 

 

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