「レン」 「は るな、さんっ」 I'm not HERO. But... (ヒーローにはなれないかもしれないけど、握った手を離したくないと思ったのは嘘じゃない) 呼び声に振り向き、嬉しそうに駆け寄ってくる。 子供のような仕草、表情。 子供にそうするように三橋の頭を撫でながら、どちらかというと犬に懐かれたような気がするかも、などと考えてみたりして。 臆病で、警戒心が強くて、でも少し優しくされるとふりふりと尻尾を振って懐いてしまうような。 けれど懐かれるのは悪い気がしなくて。 それどころか、向けられるきらきらした目が何やら可愛く愛しく思えてきてしまったりして。 「悪い、待ったか?」 「いい、えっ。榛名さん、時間ピッタリ ですっ」 「でもお前、顔真っ赤じゃんか。結構待ったんだろ」 榛名の指摘に、三橋は何やら少し泣きそうな情けない顔になってぷるぷると首を振った。 その仕草がますます小動物めいて見えて、笑いそうになるのを堪えながら三橋の頬を両手で挟み込むようにする。 予想通り、振れた頬はひやりと冷たかった。 三橋はと言えば、榛名の行動に驚き緊張しているらしく。 目をまあるく見開いて、ぴきんと音が立ちそうなほどに固まってしまっている。 そのくせ、頬は真っ赤だ。 最初こそ寒さのせいだったそれだが、羞恥やら緊張やらが頬を紅潮させたのは明らかだった。 「つめてーじゃん。どんくらい待った?」 「え、う。じ、十 五分くらい、です」 「そんだけ待ちゃ冷たくもなるわな……」 あーあー、鼻の頭まで真っ赤じゃん。 溜め息混じりに言ってやれば、三橋はそれでも平気です、と言う。 痛々しいほどにケナゲだなあ、なんて。 こんなことを思うような性格だったとは、自分でも知らなかったけれど。 三橋と居る時に引き出される感情は、どれもこれも不快なものなんてなかった。 驚きはするけれど、新鮮で楽しい。 榛名は仕方ねーなあ、と笑って。 もう一度三橋の頭をくしゃりと撫でてから、その手をとった。 手袋ごしだけれど、冷えているのが分かるような気がする。 掴んだその手をぐ、と軽く引いて。 そのまま、榛名は三橋の手を自分のコートのポケットに押し込んでしまった。 「よっし、とりあえずあったまれるトコ行くか」 「う、ぇ はるな、さ」 「レンには遅刻しなかったで賞ってことで、特別にココアを奢ってやろう」 「ホント、ですかっ」 「おー。紅茶よかココアのが好きだろ、レン」 「はいっ」 榛名の言葉に嬉しげに頷く三橋は、ココアに惑わされて掴まれたままの手のことに気付かない。 ちょろいなオイ、と少し危機感を覚えてしまう。 この調子で誰にでも簡単に騙されてしまうんじゃなかろうか、と。 ポケットの中の手をきゅうと握り締めながら、色々言い聞かせなきゃなあと思う。 花も嵐も踏み越えて、というと綺麗すぎるかもしれないけれど。 三橋の隣りと笑顔を手に入れるまで、それはもう紆余曲折を経ているのだ。 簡単に手放す気なんて、これっぽっちもない。 その為の予防線を張ることなど、当然だ。 「次から待ち合わせは建物の中にしようなー」 「は、いっ」 とりあえず今は。 冷えた手を暖められればいい。 そう思いながら、手を握る。 END |
副題長すぎます、なハルミハでした。 最初は副題が普通にタイトルでした。 そんでそろそろ梅雨ですか、な時季なのに真冬の話… 色々ずれているのが不安ではありますが、 レンの誕生日ってことでおお振り部屋始動でございます。 榛名の誕生日一週間後…… 榛名の性格やら口調やらが全体的に古めかしいのは 書いてる人間が古めかしいからで、す……(泪) UPDATE/2005.5.17(HAPPY BIRTHDAY,REN!!) |