だんでらいおん case4 ルフィの言葉にどんな返事をしたのか、その時の自分がどんな顔をしていたのか、エースはよく覚えていません。 別れを告げ自分のねぐらに戻ってきたエースは、ルフィの言葉を頭の中で何度も繰り返していました。 紡ぎ、繋がり、途切れないもの。 いつかいなくなる自分を知りながら、それも悪くないと思え笑えるのは、覚悟しているからなのだろうか、と。 植物の寿命は短いことを、エースはちゃんと知っています。 ルフィとの別れが、きっとそう遠くない日に訪れるであろうことも。 そっと撫でて抱きしめたいのに、鋭い爪のある手ではそれも出来ません。 エースは自分の手を見下ろしながら、色々な事を考えていました。 翌日は朝から雨が降っていました。 黒い雲が空を埋め尽くし、大粒の雨が音を立てて降り注いでいます。 遠くで雷が鳴るのも聞こえてきていました。 サバンナに暮らす生き物は、こんな日は雨露の凌げる場所に身を寄せ動かないでいるのが普通です。 にも関わらず、エースはねぐらを出て歩いていました。 向かう先は当然のようにルフィの元です。 ひどく降りしきる雨は全身を隈なく濡らし、体温を奪っていきます。 それでもエースは止まろうとはしませんでした。 雨にさらされているのはルフィも同じです。 ですが残りの時間が限られているのなら少しでも一緒にいたいと、この身体ならルフィを雨から守ることも出来るだろうと、そんなことを考えていました。 歩くエースの口元には、きらりと光る小さな石がくわえられています。 その石は、琥珀と名付けられているものでした。 琥珀は太古の樹から流れ出た樹液が固まって作られる、珍しい石です。 気が遠くなるほどの長い年月を経て、時の果てに輝くもの。それは奇しくも、ルフィが口にした繋がっていくもの、を体現したかのようなものでした。 ですがエースは、人間の名付けた琥珀などという名も謂れも知りません。 石を選んだ理由は、ルフィのように黄金色に輝く様が気に入ったのと、中に閉じ込められた小さな虫が珍しかったからでした。 ルフィに見せれば喜ぶだろうと、ただそれだけを考えて、エースは琥珀を土産に選んだのです。 雷の音が近くなってきて、エースは足を急がせることにしました。 ルフィの性格からして雷を怖がるようなことはないでしょうが、雨がひどくなれば花にも影響がありそうだと感じたからです。 橋に差し掛かり、もう少しでルフィの元へ辿りつける距離までやってきた、その時でした。 周囲が真っ白に光り、身体が痺れる程の轟音が響きわたりました。 頭上に雷雲がやってきたのだろうと空を見上げた時に、エースはふと異変を感じ取りました。 足の下が波打つように揺れているのです。 地震でも来たのかと思った次の瞬間、エースの身体は宙に投げ出されていました。 何が起こったのか分からないまま、けれどルフィのために持ってきた石だけは手放すまいと必死でくわえなおしたのを最後に、エースの意識はぶつりと途切れたのです。 |
一緒にいたい。 UPDATE/2010.7.31 閉じる |