だんでらいおん case3



 おれは、ここで根を張って生きていく自分に後悔なんてしてねえぞ。
 この辺さ、おれとおんなじヤツ、いないだろ?
 ここまでどうやって来たのか、ここに来る前はどこにいたのか、おれは覚えてないけどさ。
 でも多分、おれはここからずっと遠くから来たんだと思うんだ。
 風に乗ってさ。

 おれだって、いつか枯れるんだ。おれを飛ばしてくれたやつと、おんなじように。
 けど、おれが残して飛ばす種は、きっとここより遠くへ行くだろ?
 おれが来た場所より、おれがいる場所より、ずっと遠くまで。

 おれがいなくなっても、おれの紡いだものは続いていくんだ。
 命は途切れたりしねえ、繋がってんだ。
 この景色は、きっとおれを飛ばしてくれた花は知らなかっただろ?
 でも、そいつがいなきゃおれだってここにいないんだ。
 おれ自身が広い世界を見れなくても、おれがいなきゃ紡がれなかった命が、おれ以上のものを見るんだ。

 それってさ、そんなに悪いことでもないだろ?
 おれは、そう思う。
 それにおれ、楽しいぞ?
 エースが来てくれて、聞かせてくれる話、すげえ面白いからな。
 おれの次に、見たことのない景色を見せてやりたいって、今までよりもそう思えるようになったのはエースのおかげなんだぞ。



 

 

生まれてきたから出会えたこと。



UPDATE/2010.7.31


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