だんでらいおん case2 その日から、エースは毎日ルフィの元へと通うようになりました。 臆することなく自分と接してくれるだけでも充分に嬉しいものでしたし、エースのするサバンナの話をルフィはいつも楽しそうに聞いてくれました。 エースにとっては何の変哲もない日常も、ルフィは目を輝かせながら知らない世界の話はワクワクする、と笑うのです。 ルフィと過ごす時間は楽しく穏やかで、だからこそ余計に別れ際は寂しいものでした。 もっと一緒にいたい、いっそ連れて行きたいとまで思うのに、それは決して叶えられないものだとも分かっていました。 大地に根を張らなければ、植物は生きていけません。 それを無理に引き剥がせば、待っているのは考えたくもない結果でしかないのです。 せめてルフィが、自分の足で歩ける小動物であったなら、片時も傍から離れず離さず守ってやることができるのに。 別れの言葉を告げるときのエースは、いつももどかしい気持ちでいっぱいでした。 サバンナの草を風が揺らす様子も、背の高い木に実る美しい色の木の実も、高い崖の上から音を立てて流れ落ちる白い滝も、何一つ見せることができないのです。 自慢の爪も牙も、何の役にも立ちません。 今まで生きてきて不自由など感じたことのなかったエースは、初めて無力感を味わっていました。 出来ないことなんて、何もない、と。そう思っていたのに。 「おまえに、見せてやりたいもんが沢山あるのにな……」 ある時呟いたエースに、ルフィは少しだけ黙った後に言いました。 |
初めての気持ち。 UPDATE/2010.7.31 閉じる |