Trick or Treat!



「みゃーあ。Trick or Treat!」
「あん? ああ、ホレ」

 ぽい、と口の中にガムを放り込まれる。
 ふわりと広がる、シトラスミントの香りと味と。
 御柳を示すトレードマークのような、風船ガム。
 今日も今日とて常備していたらしい。というか、現在進行形で口の中にあるらしく、もぐもぐと咀嚼している。

「ちっ、イタズラ出来なかったか」
「オマエのイタズラは常に全力だろうからな。こっちも今日は身構えてたっつの」
「あーあ、思考読まれてるとやりづれーのー」
「言ってろ。あ、じゃー俺も言っとくか。Trick or Treat?」

 にやり、笑いながら御柳が言う。
 それに天国はべ、と舌を出して。
 ポケットの中から取り出した飴の包みをずい、と御柳の顔の前に突き付けた。
 ハロウィン仕様の、オレンジと黒の包み紙。中身は勿論、パンプキン味。

「なーんだよ。折角イタズラしてやろーと思ったのに」
「思考読まれるとやりづれーだろー? ざまーみろ」
「ま、しゃーねえか。それだけお互い想い合っちゃってるってことっしょ?」
「……そういう事にしておいてやらなくもナイ」

 とりあえず、今日のハロウィンの勝敗は引き分けということで。
 ……そもそもハロウィンに勝ち負けがあるのかどうか、というのはまあ言わない約束。

 

 

 


Web拍手掲載期間→2007.10.30 ハロウィン限定拍手でした

 

 

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