乱反射する鏡


 置いていかれたことに傷ついている、目だと。
 気付いてしまった。気付かなきゃよかった、それなのに。

「くだんねーよなぁ」

 シニカルに笑う、その顔に、双眸に。
 隠しきれない孤独がある。
 痛いのに、痛いと言えない。だって言ってしまえば、痛みに苦しみ顔を歪めることになるから。
 それなら始めから、痛みになど気付かないフリをしてしまえばいい。
 例え薄れても傷が消えることなど、ないのだから。

「どこにも行けねーのに」

 気付いてしまった。
 俺と同じ、その目に。
 無理矢理鏡を覗き込まされているような、不快にも近い感情。
 鏡を叩き割りたくて噛み付いたのだと、そんなことはきっと誰も知らない。
 …噛み付かれた、アイツ以外は。

「どーするかは、オマエに選択権やるよ」

 分かりにくいけど、優しい。
 バカだなあ、そんな事言ったら。俺はオマエの手を取るに、決まってるのに。



芭猿。

 

 


Web拍手掲載期間→2007.4.10〜2007.5.26

 

 

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