【ICO イコ−霧の城−パロ】 (イコ=天国) どうしてこの城には、誰もいないんだろう。 出口を求めて歩き回りながら、人の気配どころか生き物の気配一つすら感じられないことに天国は首を傾げた。 こんな大きな城なのに。 それとも、城の別の棟には誰かがいるのだろうか。 その誰かに見つかったら、自分はまた石棺に戻されてしまうのだろうか。 そんな考えが頭を過ぎったから、誰かを捜し求める大声を張り上げることは躊躇われてしまった。 もし考えた通りにならなくとも、城にニエとして捧げられた自分が歓迎されるとは到底思えない。 皮の靴の裏から伝わってくる、整然と敷き詰められた石の感触。 壁もまた、床と同じ石で作られているようだった。 誰もいないというのに、床も壁も埃で煤けているようなことはない。 まるでつい今しがたまで誰かがいたような、そうしてこの場所を丁寧に掃除していった後のようなそんな風に思える。 それなのに、誰の気配も存在も感じられない。 「……なん、だろ」 暫く無言のまま歩んでいた天国は。 ふと、風鳴りのような音を聞いた気がした。 ごおお、と。 おおおん、と。 何かが鳴くような、唸るような音。 それに導かれるように、天国は小走りになる。 どうしてか、その音のする方へ行かなければならないような気がした。 己の帰る場所を知る、賢い馬のように。 天国は気付けば、駿馬のように駆け出していた。 音のする方へ、ただまっすぐに。 向かった先に何があるのかも、分からないまま。 END |
以前にも拍手お礼で置いていたICOパロの続きです。 いっそ潔いほどに天国さんだけで進んでいく話…… 需要はないでしょうけど、書いてる本人は結構楽しいです。 そのうちまた書きそうな気も…… Web拍手掲載期間→2005.3.28〜2005.4.30 |