【梟の揺り篭】 芭猿 俺はきっと、心のどこかでずっと孤独だったんだ。 多分それはあいつも一緒で。 孤独な魂と魂が寄り添いあって、どこへ行けるだろう。 例えば俺の孤独が水槽の中にいる熱帯魚だったとして。 水槽の中を満たすのは、他でもない俺の涙なんだろう。 あいつはきっと、梟だ。夜の空を我が物顔に飛び回る、だけどどこか孤独な。 涙に溺れるちっぽけな魚は、きっと空を焦がれる。 それが、抱くことさえ虚しいだけの希望だって分かってても。 だって、ここは、苦しい。 涙の水で一杯で、上手く呼吸が出来ない。 苦しくて眠れない。眠りたいのに。 ……知ってるよ、俺が強くないなんて。 押し寄せる不安にいつだって潰されそうで。 誰か。誰か誰か誰か。 「天国」 「っ、あ…? れ?」 唐突に世界が鮮明になり、天国はぱしりと瞬いた。 目の前には御柳の顔。その後ろには天井。 自分が寝転んでいるのだと気付くのに、もう数秒。 「起きたかよ」 「ああ、うん。えっと……魘されてたか、俺」 「喉押さえてた」 「げ」 妙な夢を見たせいだ、と言いかけてやめる。 どうあっても心配をかけてしまったのは事実だし、そうでなくても己の弱さを象徴するような内容を口にするのは気が引けた。 ふと手首に違和感を覚え目を向けると、御柳の手がしっかりと掴んでいた。喉を押さえる手を外したのだろう。 目線を御柳に戻すと、ふっと微笑まれた。 大丈夫だ、と。言葉にするでもなく伝えてくるような表情。 「……みゃあ」 「ん。も、いーから寝ちまえって。明日も早いっしょ」 「俺……」 言葉が出てこない。ごめん、と言いかけて口が動かないことに気付く。自身で思っていたよりもずっと眠気が差していたらしい。 ゆるゆると、意識が沈んでいく。それでも天国は、心の内で御柳に謝り続けていた。 ごめん、ごめんな、俺ばっかりが凭れ掛かって。 俺だってお前を支えたいのに。弱さを見せてくれていいのに。 御柳、お前が泣いたら、俺はずっと傍にいるから。お前が俺にしてくれたみたいに、眠るまで一緒にいるから。 俺の腕を掴んでくれたから、俺はそれが嬉しかったから。 だから、俺はお前を孤独にはしないよ。 今度は俺が、お前が眠るまで歌っててやるから。 END |
Web拍手掲載期間→2008.5.15〜11.20 ムッ/クの「志恩」かってにリスペクト小話。と銘打って書いた話。 ヤミ猿好きッコでほんとすいません、としか…… |