7月25日、は


◆芭猿・天国はぴばすでー!◆

「終わったな」
「やっぱ本庄っしょ?」
「最後まで分かんねーのが野球だろが」

 そんな会話をしながら眺めるのは、グラウンドの真ん中で整列する球児たちだ。
 甲子園90回記念大会である今年は、北埼玉と南埼玉に別れて2校が出場できる。その北埼玉大会の決勝が、今日だった。
 本庄第一と、上尾がそのカードだった。
 結果は本庄の勝利。

「俺らん時も2校行けりゃあなー華武と十二支、揃って甲子園、なんて面白かっただろうにな」
「行けても多分同じブロックだぜ?」
「あ、そういやそっか。つまんねえー」
「……ま、センバツで充分楽しませてもらったし、俺は」
「あー、なんか懐かしいな」
「そだな」

 あの、夏の日が。
 暑くて、熱くて、ただ無我夢中だった日々が。
 なんだか酷く遠く感じるのは、寂しいような気がする。球児たちを目の前にしているから余計そう思うのかもしれない。
 今の生活を否定したいわけでは、決してないのだけれど。

「な、明日花火大会」
「どこの」
「隅田川」
「……で?」
「明日の決勝見て、それから行こっぜ。たまには息抜きしねぇとな」
「花火でかよ」
「行くっしょ?」

 にやり、自信たっぷりの笑顔が小憎らしい。出会った頃から変わらない。
 けれどその顔が嫌いではないのだから、相当重症なのだろうと思う。
 誘いは魅力的だった。天国の好みを知った上での、的確な。
 それでも直ぐに頷くのは癪に障るので、わざとつまらなそうな顔を作ってみたりして。

「ベタじゃねえ?」
「好きなくせに」
「どうだかなー」
「素直になんねえとキスすんぞー」
「バッカ、今さら脅しになるかよそれが」

 思わず笑って、手を握った。
 過ぎた夏には、戻れなくていい。
 思い出の中の熱さと、今触れている手の暖かさを比べるなんて愚かなことはしない。
 どちらも、比べるべくもないほどに大切なものであることだけは間違いようもない事実なのだけれど。

「じゃ、また明日も、だな」
「おう」

 大事なものが増えるばかりなんて、どれだけ幸せな毎日だろう。



END

 


猿野天国の誕生日、です!

天国の誕生日に埼玉大会の決勝戦、なんて運命的!
まあ誕生日が7/25っていうと結構当たりそうだけどもね、なんて言っちゃダメダメー。
とりあえず取り急ぎ小話!
ゴメンね天国やっつけで!!
つーか時季モノは苦手なんすよ……遅筆だからぁぁぁ。
2008/7/25

(UPDATE/2009.4.4)

 

 

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