【ぼくの地球を守ってパロ】 (ありす=天国、輪=御柳) 届かない。 足りない、届かない、悔しい。 この腕も、背も、想いも。 悔しくて、不安で、虚しくて。 何処に、何に向かうのかすら分からないのに、ただ憎しみばかりが募り、心の内で渦を巻く。 嵐のように。 心を支配する。 「……くそ……っ」 ぎりり、と唇を噛んだ。 ぎゅう、と拳を握り締めた。 どちらも、心を満たしはしなかった。 苛立ちに任せて拳を振り上げた、その瞬間に。 「芭唐?」 ふっと、空気が和らいだ。 さわさわと、木立が歓迎するように揺れる。 風が、柔らかく舞う。 彼のひとの、訪れをただ祝福するように。 喜ぶように。 「……あまくに」 「どした? ……ってお前、顔青いじゃんか! 気分でも悪いのか?!」 「なんでも、ない」 「何でもなくないだろ?! 痛い時は痛いっつっていーんだよ」 言いながら、御柳のすぐ傍までやってきた天国はポケットからハンカチを取り出した。 御柳と目線を合わせるようにしゃがみながら、天国は御柳の額の汗を拭う。 そうされて初めて、自分が汗をかいていたことに気付いた。 触れる指に、固くなっていた心がゆるゆると解かされていくのが分かる。 女性のように繊細ではないけれど、暖かく優しい指だった。 言葉にせずとも伝わってくる、大丈夫だ、という言葉。 それがただ心地よくて、御柳は目を伏せた。 「芭唐?」 「うん……気持ちいーなって、思ってさ」 「大丈夫なのか?」 「平気に決まってんだろ。陽射しが強くて、少し貧血みたいになってただけだし」 「あー…今日、あっついもんな〜」 言いながら、天国は空を振り仰ぐ。 太陽の光に眩しそうに目を細めるのが、笑っているように見えた。 愛しい。 触れたい。 胸を締めつけるように、そんな想いが湧いてくる。 太陽、でさえも。 彼の目を奪うことが、悔しいと。 そんなことを考えてしまう。 衝動的に、手を伸ばしていた。 「芭唐?」 「天国の手、冷たくて気持ちいーから」 「じゃ、落ち着くまで貸してやるよ」 「……あんがと」 掴んだ手を、頬に押し付けた。 冷たい、なんて言い訳に過ぎないのに。 それを笑って享受する天国が愛しくて、少し、憎かった。 ここに居たのが自分じゃなくても。 同じことを、他の誰かが言っても。 きっと天国は、笑って頷いていただろうと考えて。 それでも。 愛しさも憎しみも凌駕する、触れられることへの喜び。 好きだ好きだと、心が叫ぶ。 少しだけ後押しされれば、今にも口をついて出そうなほどに。 この、澄みきった空がどこまでも続くものだというのなら。 それと同じだけ、この時間が続けばいいのに。 中空に浮かぶ白い月を少しだけ睨んで、御柳は天国の手をぎゅうと握った。 END |
Web拍手ありがとうございますSS、第六弾。 有名少女漫画さんからです。 好きな方スイマセン、と平謝りですが(汗) 高校生な天国さんと小学生な御柳氏が書きたかったのですよ。 年下にも程があるけども(笑) 頭ぐりぐり〜っと撫でられてムッとする芭唐さん。 とかちょっと新鮮じゃないっすか?(趣味走るな) Web拍手掲載期間→2004.8.8〜2004.9.11 (UPDATE/2004.9.11) |