【ディアーズパロ】 (武哉=天国、レン=御柳) 「俺はお前の奴隷だ、ご主人」 見たこともないような綺麗な顔。 それを俺の目の前数センチに近付けて、囁かれるのはそんな言葉。 ……奴隷だのご主人だの。 そんなことを日常生活で言う奴なんて、見たことねっつの。(SMクラブとか行きゃ言ってんのかもしんねーが生憎行く予定もその気もない) ディアーズ。 そう名付けられた宇宙人どもが東京湾に宇宙船ごと降ってきたのは、結構前の話だ。 ニュースで散々やってた。 その頃俺の部屋にTVはなかったが(今はある、貰い物だけど)、TVも新聞も雑誌も連日それのことばっかで、街中どころか日本全土がその色に染まってたぐらいだから流石に俺も知ってる。 けど、でも、まさか。 その話題の宇宙人と自分が知り合いになっちまうとは思わなかった。 本人曰く『主人と奴隷』らしいんだが。 ……誤解のねーように言っておくが、俺は認めてねーからな。断じて。 「天国〜♪」 「だああ、もう、いちいちくっつくな!」 「……おう」 しぶしぶ、と言った体で離れるのは御柳芭唐。 先述した宇宙人、である。 しゅうん、という効果音が聞こえてきそうな表情でもって。 その表情を見ると、どうにも自分が悪いことをしているような気になってしまう。 しかし、話題の宇宙人であるというだけでも充分目立つというのに、その宇宙人に引っ付かれて歩くなんて前代未聞だ。 カワイイ女のコならまだしも、宇宙人と。 それも、宇宙人な上に男と。 冗談じゃない、と天国は首を振る。 と、ぺしりと後頭部を叩かれた。 「手ぐらい繋いでやれよー。心の狭い奴ー」 「テメぇ、他人事だと思いやがってっ」 「正しく他人事だろう」 「うぐぅ」 またりと口を挟んできたのは、天国の幼馴染みの沢松だ。 天国は沢松をじろりと睨む。 だが睨まれた方はと言えば、どこ吹く風だ。 御柳は沢松の言葉に、うんうんと頷いている。 追い込まれた感のある天国は、唸りながらきゅうと眉を寄せた。 そんな天国に、御柳はじいぃっと視線を送ってくる。 黒目がちの、少しキツイ印象にも見える目が、まっすぐに天国に向けられる。 天国は、その目で凝視されるのが正直苦手だった。 別に、御柳が嫌いだとかそういうわけでは、決してないのだけれど。 どういうわけだか。 その目でまっすぐに見られると、心臓が早鐘を打ち出してしまうから。 ……あぁ、ちくしょう、まただよ。 どきどきどき。 音の鳴り出した心臓に、閉口する。 胸元を押さえたいのを、鞄を握り締めることで何とか堪えた。 「天国?」 「な、なんだよっ」 「手ぇ繋ぎたい」 顔を覗き込まれ、頬に熱が集まるのを感じた。 男だとか女だとか。 地球人だとか宇宙人だとか。 そんなのは、関係ないのかもしれない。 真摯な態度、姿勢に心が揺り動かされてしまうのは、仕方ないことなのだから。 「うぅ……」 「なぁ、ダメか?」 「……ほれ」 「いいのか?」 「ヤなら、いいけど」 「ヤなわけないっしょー!」 手を差し出せば、ぎゅうと握られる。 にこにこと、嬉しげに笑まれ。 天国は、困惑と呆れが入り混じったような顔をした。 毎回折れるくせして、何で否定するかねー、と呟いた沢松に蹴りを入れるのを忘れずに。 「帰りも繋ごうな?」 「……考えとくよ」 END |
Web拍手ありがとうございますSS、第四弾。 さり気なくハマってる感じの漫画のパロ作です。 芭唐氏の「天国ラヴ〜vv」っぷりが今までになく、 かなり書いていて楽しかったです。 配役を変えた別ヴァージョンも考えてます。 今更ながらですが拍手お礼は短く趣味に走ってるものが多いです(苦笑) お礼と言うか、むしろ自分の好みなんですけど… 楽しんで頂ければ幸いです。 Web拍手掲載期間→2004.7.2〜2004.8.8 |