陽だまりに二人、猫のように転がって。 御柳の手が天国の頬を撫でて、天国の指が御柳の髪を梳く。 そうして二人、楽しげに笑い合う。 ねこ曜日 発端は、日向で雑誌を読んでいた天国の膝に、御柳が頭を乗せた事からだった。 唐突な御柳の行動に、けれどいい加減慣れてきていた天国は笑いながら膝を提供していたりして。 けれど、あんまり御柳が嬉しそうな、幸せそうな顔をするものだから。 そのうち天国も読んでいた雑誌を放り投げ、二人猫のようにじゃれ合いだしたのだ。 「おい、噛むなって」 「じゃ、舐める」 「それもダメー」 指先に八重歯を軽く当てられ、天国はそれを窘める。 けれど御柳はと言えば、悪びれた様子もなく。 べ、と赤い舌を覗かせたのに、天国は笑いながらその髪を軽く引いた。 「今のお前の顔、絶対誰にも見せらんねーなー」 「ふーん?」 「華武の4番だなんて信じらんねー。ちょー揺るんだ顔」 「今の俺、華武の4番じゃねーし? 今はお前のコイビトっしょー」 億面もなく言い放つ御柳に、天国は嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な心境に陥る。 そんな天国の頭を、御柳は寝転んだまま自分の方へ引き寄せた。 子供が甘えるような、そんな仕草で。 驚いたらしく一瞬体を強張らせた天国だが、すぐに力を抜いて。 抱き締め返す代わりに、御柳の髪に触れていた手がくしゃりと髪を撫でた。 「あったかくて眠くなりそ……」 「俺もー」 「御柳ー?」 「んあ?」 くあ、と欠伸をしながら答えるのに、天国は小さく笑う。 抱き寄せた御柳にその顔は見えなかったが、触れた暖かな吐息でそれが分かった。 笑われたのが悔しくて、けれど何故だが可笑しくて。 笑いながら、御柳は腕の中の天国の髪に頬を寄せる。 「今日は夜まで、こうしてよーな?」 「いちゃついてんの?」 「おう。偶にはいーだろ? こういうのもさ」 陽だまりで、猫みたいに転がって、じゃれ合って。 バカなことを言い合って、笑って。 だけれど、それ以上の幸せなんてありはしないから。 「天国。好きだかんなー」 「俺も好きだって言ってんじゃん」 「ん、知ってる」 くすくす笑って。 そのまま眠ってしまった二人が目を覚ますのは、夕方なんてとっくに過ぎた夕飯時のこと。 END |
Web拍手ありがとうございますSS、第一弾。 ということで書きました芭猿。 元ネタは谷山浩子さんの「ねこ曜日」という歌だったりします。 しかし何をどう転がってこんなに甘い物体に仕上がったのか…(笑とけ笑とけ〜) ちろりと歌詞↓ 「ねこ曜日 何もしない ねころんで まどろむだけ あなたのひざ 温かい ほかに 何もいらない ねこ曜日 何もしない ねころんで日ざしの中 ややこしい仕事のこと 今は忘れていよう 甘えてね ねこのように 首筋をなでてあげる 静かに夜のとばりが 部屋を包む時まで」 Web拍手掲載期間→2004.4.3〜2004.7.2 |