玄関を出た途端に、出迎えてくれたのは強い風だった。
 風が吹き抜けて行く。
 ざあ、と音がする。

 太陽は顔を覗かせていて、空も蒼いのに。
 空気だけが、張り詰めた様に冷たい。
 寒い。

 肩を竦ませながら、息を吐いた。
 吐いた息がほわりと白に染まる。


「……あ?」


 きらきらと、何かが舞っていた。
 不審気に眉を寄せ立ち止まり、それのそれの正体を見極めようとする。


「風花、か……めっずらし…」


 先日降った雪が、風に煽られて舞っているのだろう。
 日の光を受けて、きらきらと。
 山奥でも何でもないこの辺りでは、滅多なことでは雪が降らない。
 だから、雪も風花も珍しいものだった。

 何となく、手を伸ばす。
 けれど当然のことながら掴めるものなどなく。
 煌くそれは、確かに目に見えるのに。
 触れられないもどかしさだけが、確かに指先に残った。

 見上げた空に、きらきらと風花が舞っている。
 高く蒼く澄んだ空が、何故だか目に痛い。
 こんなのはダメだ、と思う。
 無条件に綺麗なものなんて、きりりと胸が痛むに決まってる。

 目を細めたのは、眩しかったからか、否か。
 それは御柳本人にしか分からない。
 けれど、ただ、無性に。

 理由もなく、天国に会いたいと。
 そう、思った。
 今、隣りにいて欲しい、と。

 こんな想いを口にして伝えたら、笑われるかもしれないけれど。
 それでも。
 一緒にいたいと、そう思った。







  風花の向こうにいないひとの面影







 

 

埼玉で実際に風花飛んだぜいえーい。
記念。

にノリと勢いで書いてみました。
綺麗なものを見ると無性に人恋しくなったり、
淋しくなったりとか。
……ありません?


UPDATE 2005/1/23()

 

 

 

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