ゲーム実話ネタ。銀魂くえすとかぶき町モード23訓闘技場最終戦(高杉、敏木斎、星海坊主)より。
※闘技場ルール・相手を殺したら即失格。以上。





時には獣も恋をする(多分)




「やられたアルゥゥ……」
「神楽ちゃんっ!」

 星海坊主の一撃に、神楽がぱたりと倒れた。
 慌てて駆け寄ろうとするが、銀時に腕を掴まれ止められる。

「銀さんっ、神楽ちゃんが……!」
「まー待て、落ち着けよ。神楽だってタダでやられた訳じゃねぇ。見てみろ、アイツの根性を。アイツのとっつぁん、フラフラだろうが」

 見れば確かに銀時の言葉通り、星海坊主は最早満身創痍といった体だった。
 おそらくあと一撃か二撃で倒れるだろう。
 相手は敏木斎が倒れ、こちらは神楽が倒れ二対二だ。
 ここで星海坊主を倒して二対一に持ち込めれば勝機はぐっと近くなる。
 新八は倒れた神楽に目をやり、けれど静かに頷き竹刀を握り直した。そうして相手方……高杉と星海坊主へと向き合う。

「フン……俺がそう簡単に倒れると思うのか? ハンターの名は伊達じゃねえぞ」
「親ってのはよ、いずれ子供に追い抜かされるもんなんだぜ?」
「神楽ちゃんの為にも……ここは、負けられないんだ!」
「ガキが調子づいてっと、痛い目みるぜぇ?」

 四人の言葉と視線、気迫が交錯する。
 先に動いたのは星海坊主だった。
 倒れかけとは思えない速度で、銀時の前へ移動する。

「くそ……っ」
「俺がどれだけの修羅場をくぐってきたと思ってる」
「ぐああっ!」
「ざまァねーなァ。弱くなったんじゃねぇのか、銀時よォ」
「テメ、高杉、コノヤロっ!」

 星海坊主に吹っ飛ばされた銀時に、更に高杉が追い討ちをかける。
 痛みに顔を歪める銀時の、その後ろで。

「修羅場の数が自慢になるかァァァッ!」
「ぐおっ」
「へっ、やーるじゃねぇの、ぱっつぁん」

 新八が星海坊主に一撃を入れることに成功していた。
 膝を着く星海坊主を見て、銀時が薄く笑う。
 そうして木刀で肩を叩きながら、星海坊主の正面に立った。

「クソ……ガキにやられるたぁ、立つ瀬がねぇな……」
「時代が動いていくのは世の常だ。ま、のんびり行こうじゃねーの」

 言った銀時が、木刀の柄で星海坊主の頭を小突いた。
 限界だったのだろう星海坊主が、がくりと倒れる。

「さぁて」

 銀時が高杉に向き直ると、高杉はやる気があるのかないのか分からない風体で立っていた。二対一になったにも関わらず、焦った様子など欠片も見られない。
 その口元に浮かぶ笑みは相変わらずだ。何を考えているのか分からない。
 イヤなヤローだねどうも、と内心で呟き木刀を握り直す。
 高杉の左手側、やや離れた場所に新八が立っていた。
 竹刀の切っ先はぶれる事なく、その眼差しは真っ直ぐ高杉を見据えている。
 イイ顔するようになったじゃねぇか。ガキは大人になるのが早くてやんなるよ。
 そんな事を考え、少し笑って肩を竦める。そうしてから銀時もまた、木刀の先を高杉に向けた。

「二対一だっつーのに、余裕ある面だな」
「今のお前に俺がやれるとでも? 甘ぇなぁ……脳味噌まで砂糖漬けか、銀時ィ」
「俺としちゃ、こんな甘っちょろい試合にお前が出て来た事が驚きなんだがな」
「暇つぶしにはなんだろ?」

 高杉がくく、と声を立てて笑う。
 神経を逆撫でするような笑い方に、思わず眉根が寄った。
 けれど、切り札を使うのは今しかないとも判断する。
 銀時が懐に入れていた手を引き抜こうとした、その瞬間。

「銀さんっ!」
「やっぱり、弱くなったなぁ、銀時よぉ」
「く、そ……っ」

 こちらが向こうの隙を伺うのと同様に、高杉もまた銀時の隙を伺っていたのだ。
 高杉から意識が逸れた、ほんの一瞬の隙に。容赦なく打ち込まれ、膝を着いた。
 けれど、意識を飛ばす程ではない。
 悪態をつき、痛みに顔を歪めながらも、手にした物は手放さなかった。

「神楽……いい加減起きやがれーぇ」

 膝を着いたまま、手に持っていたビンを投げる。
 投げられたのは「命の黄金水」と呼ばれる代物だ。
 この大会用に配布されているアイテムの一つで、気絶した仲間の意識を回復させる効果がある。

「ほあちゃァァァ! クソオヤジ、毛ぇ毟ってパーフェクトハゲにしてやろうかァァァ!」
「か、神楽ちゃん落ち着いて! 星海坊主さんならもう気絶してるから!」

 跳ね起きた途端にエンジン全開の神楽に、新八が慌てて言う。
 神楽は一瞬何が起こったのか分からないように辺りを見回していたが、やがて膝を着く銀時と佇む高杉を見て表情を険しくした。

「後はコイツをタコ殴りにすればいいアルな?」
「間違っちゃいないけどもうちょっとオブラートに包もうよ神楽ちゃん……」

 神楽の歯に衣着せぬ物言いに溜息を吐いた新八が、何食わぬ素振りで銀時に何かを投げてくる。
 咄嗟に掴んだそれは。

「バーベキュー……! 久し振りの肉じゃねぇか、オイ!」
「あー! 銀ちゃんずるいネ! 肉の食べすぎは体に良くないから寄越せアルゥゥ!!」
「あれ回復アイテムだからね神楽ちゃん?!」

 飛んできた神楽を避けて、新八が目を丸くして、とんだ茶番というかドタバタ劇というか。
 もしゃもしゃとバーベキューを死守しつつ齧りながら、アイツよくこれ傍観してやがんな、とふと思った。
 ちらりと様子を伺い、そこで。

「何してやがんだよテメーはよォォォ?!」
「あー? うっせぇな。見りゃ分かんだろ、酒だ酒」

 思わず叫んでしまった。
 気が緩んだ隙に神楽がばくりとバーベキューに齧り付いたが、生憎肉の部分はもう残っていなかった。
 銀時が叫んだ理由。それは高杉がいつの間にやら酒を煽っていたからだ。
 何食わぬ顔で呑んでいるが、あれは。あのやたら高そうなビンは。

「ドンペリをラッパ呑みって……色んな価値観ぶち壊されそうな光景だなあ」
「欲しけりゃやろうか、呑みかけでよけりゃぁな」
「未成年ですからお断りします」
「そりゃ残念だ」

 くく、と笑いながら高杉が空になったらしいビンを投げ捨てた。
 ドンペリが回復アイテムってどんなセレブだよオイ。
 てゆーか新ちゃん、フツーの会話してるしね。肝っ玉太ぇなあ。

「ただの飲みモンだろ、こんなもん」
「ふぎゃっ!」
「神楽!」

 言い捨てた高杉が地を蹴った。
 次の瞬間、神楽が声を上げて吹っ飛ばされる。
 だが多少ダメージを負ったものの意識はあるようですぐに起き上がり悪態をついた。

「アッタマきたアル! 脳天カチ割るぞオラァ!」
「へ、言ってろ」
「酒飲みに負けたなんて恥ずかしいですから、ね!」

 神楽が吹き飛ばされた時点で走り出していた新八が、高杉に向けて竹刀を振るう。
 高杉は焦った様子もなく体を斜めにしただけでそれを避け、持っていた刀で竹刀を受け、払った。

「う、く……!」

 よろめかされた新八が、不安定な体勢ながらも防御の構えを取る。
 が、高杉は新八にそれ以上の追い討ちをすることなく、向きを変え銀時に狙いを定めた。
 ぴりり、と空気が張り詰めるような感覚。
 銀時が高杉からの一撃を受けるべく木刀を構えた、瞬間。

「ちょっと待てコラァァ!!」

 響き渡った叫びは、新八のものだった。
 怒り心頭と言わんばかりの形相で、竹刀を高杉に突きつけている。
 高杉は面倒そうに振り向いた。しかし体は未だ銀時の方へ向けられたままだ。
 銀時の横に、神楽が並ぶ。

「何なんですかそのあからさまな無視! 僕が格下だとでも言いたいんですか!」
「んだァ? 打って欲しかったのか。マゾかお前」
「違いますよ! バカじゃないですかっていうかバカですよね!?」
「打たれなかったから文句言ってんだろうがよ?」
「確かにそうですけど僕にはそういう特殊かつ歪んだ性癖はありませんから!」
「オイオイ、全国のMが傷つくようなこと言ってやるなよ」
「腹立つ! この人すっごい腹立つんですけどォォ!!」

 突如として始まってしまった舌戦に、銀時も神楽も口を挟む隙がない。ぽんぽんと交わされるやり取りに、呆然と見守ってしまった。
 神楽だけではなく、銀時までもが唖然としてしまったのは。
 高杉の奴……何か楽しそうじゃ、ねえ……?
 興味がなければ一瞥すらくれないような奴だというのに。
 会話をしている、それどころか会話が弾んでいる。
 目の前で為されていて尚、信じ難い光景だった。

「そもそもこんな試合になんで出てくるんですか! それが根本的におかしいんですよ! 緊張感ってのないんですか!」
「あァ? 言ったろ暇つぶしだって。あと万婦麗須戸の意向だな」
「バン……今時不良ですら使わないような当て字をしちゃったよこの人!」
「せめてもの良心での伏字だろうが」
「良心とか言うな良心とか。大体音にしたら全然伏せられてないですから。ちょっともうホントどこの偽者なんですか……偽、ってまさかクローンだったり?!」
「ちげぇ」

 おーい君たちズレてってるよー。
 と、突っ込みを入れられるような猛者はここにいない。
 何せこの世界のツッコミをほぼ一手に担っているのは新八なのだ。
 銀時も多少、やむを得ない状況下ではツッコミに回ったりもする。だがやはり新八には叶わないと感じている。
 その自分がツッコミの本家こと新八にツッコミを入れる事が出来るだろうか。いやできまい。
 思わず反語を使ってまで力説してしまった。

「つーかよォ」
「なんですか」
「ツッコミいなかったら破綻すんだろが、この話」
「そ……そういう事しれっと言うなァァァ!」

 叫びと共に、新八のツッコミという名の一撃が入った。クリーンヒットである。
 その時銀時の脳内ではカーンカーンカーン、とゴングが鳴り響いたという。

 最強のツッコミ、新八に幸あれ。



END







オマケ高→新

「あーあー、行っちゃったよ。新ちゃん、怒ると恐ぇからなあ」
「面白ぇ……」
「は? 打ち所悪かった?」
「俄然興味わいたぜ……」
「お、おい?」
「俺はなァ、銀時」
「は、何? 別に聞きたくねーっつか嫌な予感しかしねぇからマジしゃべんな」
「俺と対等な奴を嫁にするって決めてんだよ……!」
「言っちゃったよこの人。バカだろ。なあバカだろお前」
「俺ァアイツを嫁にしぐふぁっ」
「……竹刀直撃ーィ。いい腕してんねー。さーて、俺も帰ろっと」





 

 


入院中銀くえのパーティー面子のレベルを上げよう、と23訓ばっかりやってた時の話。
最終戦が強いのは知ってたので大体途中までで切り上げてたんですが、気が向いて万事屋で最終戦まで突っ込んだ時です。
何故か新八にだけは攻撃してこなかった杉さま。
新八はバカな、とか言っちゃってるのに。
そこから生まれた妄想でした。
高新妄想をしろと言わんばかりでしたが、まあこんな風に。
杉さまがドンペリで回復するのはマジです。専用アイテムなんだろうか。


UPDATE/2008.9.10(水)

 

 

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