あなたとお茶を


◆沖新・お茶CMパロ◆


 歌が聞こえる。気持ち良さそうに歌っているが、その音程は外れぎみだ。
 沖田は苦笑しながら、音のする方へ歩いて行った。

「なーつーもーちーかづーく、はーちじゅーうはーちーやー」

 童謡だ。ちょうど今の時期に相応しいような歌詞の。
 部屋の中にいる新八は、着物を畳んでいる所だった。見覚えのあるそれに、新八が何をしているかに思い至る。

「新八、衣替えかィ」

 声を掛けると、新八は顔を上げた。沖田と目が合うと、にこりと笑って頷く。

「暑くなってきましたからね。総悟さんの浴衣も出しましたよ」
「そりゃありがてェや」
「もう少ししたら蚊帳も出しますから。その時はお手伝いお願いしますね」
「お安い御用でィ」

 言いながら、沖田は縁側に腰を下ろした。日向にいれば汗ばむような陽気でも、日陰は意外と涼しかったりする。
 もう少しばかり風があれば、吊された風鈴も音を立てるだろうに。
 そんな事を考えながら衣替えの続きを始めた新八を見やる。汗こそかいていないが、頬が赤い。動き回っているから、暑いのだろう。
 手伝おうかと言いかけたが、勝手を知らない分邪魔になるだけだと思い止どまる。

「新八ィ」
「なんですか?」

 呼べば、すぐに返事がある。
 たったそれだけの事が、当たり前の事がただ、嬉しいと思う。隣りに愛しいと思う人がいるのが、幸せだと感じる。

「少し休憩しねぇかィ? 茶ァ淹れてやりまさァ」

 言えば、一瞬きょとんとした新八は。すぐに破顔し、嬉しそうに頷いた。

 訪れる夏も、その先の秋も、冬も、春も。
 季節が一周した、来年の夏にも。
 こうして一緒にいられる、その為なら。
 きっと、なんだって出来る。

 そんな事を思いながら、新八の手を取った。
 ややあって握り返された手に、幸せはきっとここに在るのだと。
 暖かい気持ちでそう考え、笑った。


了.

 


挨拶は沖新!
どうも金沢です。久々のブログ小話です。
六月始めに騒いでたいえ●んCMパロです。
あー六月中に出せて良かったぁぁ。

普通に夫婦な沖新ですが、何か?(笑)
そういや金沢製新八が沖田を名前でナチュラルに呼んでるのって初かも。
この話はもうね、一緒に住んで長い設定だからね。何せ新八が衣替えしてるくらいだしっ!
書いてて楽しかったわー(笑)
2008/6/11

(UPDATE/2009.4.4)

 

 

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