くるくるり。(3Z高新、高杉同学年設定) 手にしたペンを、指の上で回転させる。所謂、ペン回しという行為。 今では結構当たり前にそこかしこで見られる光景だが、新八はそれが出来ない。 行儀が悪いよな、というのが半分。不器用だからペンを飛ばしてしまいそうだ、というのがもう半分。 自分のそれより幾分か大きい手が、指が、器用にペンを回すのを新八は何をするでもなく眺めていた。 ふと、一定のテンポで回っていたペンが止まる。 「そんなに珍しいかァ?」 「珍しいっていうか、器用に回せるなって思って」 「普通だろ、んなもん」 「出来ない人間から見れば凄いなって思うものだよ」 「なんだ、出来ねェのか」 「うん」 揶揄するような言葉に、素直に頷く。 出来ないものは出来ないのだから、見栄を張っても仕方ない。 高杉はその返答が予想外だったのか単に興味をなくしただけか、それ以上の言葉を紡くことはせずに。 その指はくるくると、またペンを回し始めた。 「動くから、気になるのかな……」 「さァな」 くるり、くるり。 ずっと同じテンポだからか、何だか少し眠気が襲う。 口を押さえて控えめな欠伸を一つ。 そこで何故かふ、と笑い声が聞こえた。 放課後の教室、この場にいるのは新八と高杉だけだ。新八は笑っていない。 そうなると答えは一つ。今、微かにだが笑ったのは。 「ね、いま」 「催眠かけてんのかもしれねェぜ? 油断してていいのかよ」 「……僕に催眠かけてどうすんの。何のメリットもないじゃん」 「そうだなァ。寝込みを襲うぐらいか?」 くく、と今度は先ほどより分かりやすい笑い声。 そして今は、ペンではなく高杉の顔に目を向けていた新八は、ハッキリ見た。 高杉が楽しげに笑う、その表情を。(予想に違わず些か意地の悪そうなそれではあったが) 「……高杉くんでも、冗談言うんだね」 返す言葉に迷った新八は、たっぷり間を置いた後にそんな切り返しをすることしか出来ず。 そんな新八の視界の端ではまだ、高杉の指がペン回しに興じていた。 くるくるり。 END |
Web拍手掲載期間→11/1〜2/26 高杉保険医設定も大好きなのですが、敢えて同学年設定で。 ちなみにペン回しが出来ないのは私もです。 |