こんな日常のハナシ。




「伸びたかなあ」

 ぽつり、呟きながら前髪を指で摘まみ上げる。
 鏡を見ながらではないので正確な所は分からないが、そろそろ切っておいた方がいいかもしれない。
 うーん、と迷っていると。ぽん、と背後から肩を叩かれた。

「何新八、前髪切んの?」
「ちょっと視界にかかる回数が多いかなって思って」
「ふーん。じゃ、さくっとやっちまうか。鋏と風呂敷持ってきな」
「はーい」

 前髪程度で散髪屋に行くようなことはしない。
 というかむしろ後ろを切る時だって自分でやってしまう。なぜなら、経済状況が逼迫しているから。
 万事屋に来る前までは、大体自分でやっていた。
 その少し前は、姉が。
 今は。
 基本情けないというか死んだ魚のような目をしているというか糖尿一直線のマダオだが、その実頼りにしている何気に器用な上司に。

「お願いします、銀さん」

 頼んでみたりしている、今日この頃。


END


 

 




2007/10/17ブログ小話
(UPDATE・07/12/10一部加筆修正あり)

 

 

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