一緒に、ね。


◆銀・沖新◆

 沖田の部屋には、基本あまり物がない。シンプルなといえば聞こえはいいが、実際は殺風景だと形容して正しいような部屋。
 時折何やら怪しげな黒魔術だの呪いだのといった本が置いてあることもあるが、それも一過性のことで大体数週間でなくなっているのが常だ。
 だがその日、沖田の部屋にお邪魔した新八は今までに目にした事のないものを見た。

「あれ…沖田さん、家具でも買うんですか?」

 珍しく、怪しげな本ではなくカラフルな冊子があった。覗き込めばそれは家具のカタログで。
 問えば沖田は、無表情に新八の顔をジッと見つめてきた。
 あまりに真剣な様子に、聞いてはいけない事だったのかと触れかけていたカタログから慌てて手を引いた。
 それを見た沖田が、ふっと軽く溜め息を吐く。何をしてしまったかと、新八は不安げな表情になった。

「洞察力が足りねーなァ、新八」
「な、何ですかいきなりっ」
「…やっぱ言わねーと駄目か」
「だから、何の」

 話なんですか、と続く筈だった言葉は遮られた。
 新八の正面に向き合うように座った沖田が、正座している膝の上にカタログの一冊を放り投げて来たからだ。
 表紙にはソファに座る一組の男女の写真と、彼らの上辺りに「ふたりの部屋」という文字が掲載されていた。夫婦もしくは同棲する人向けの家具が紹介されているのだろう。
 そこまで考えて、首を傾げた。一応沖田は、自分と所謂お付き合いというものをしているわけで。なのに何故、二人用のカタログを見ているのだろう。

「ま、色恋沙汰に疎いのも気に入ってっけどなァ。……仕込み甲斐あって」
「ちょ、今不穏な呟きしませんでしたっ?」
「いやいや、してねェぜ」
「絶対何か言った! その悪い顔はよろしくないこと言ったでしょ、何言ったんですかァァァ!」

 ドS全開な顔しやがってェェェ、と悶絶する新八を意に介した様子もなく沖田は膝に置かれたカタログを指差した。
 沖田の指先は、紛うことなく「ふたりの部屋」という文字を示していて。きょとんとする新八に、沖田は告げた。

「俺が一緒に暮らしたいって思うのが、お前ェ以外にいると思ってんのかィ?」
「は…」
「遠回しに一緒に暮らしたいって誘ったつもりだったんだがねェ」

 で、どうでィ?
 首を傾げて聞いてくる様子が、やけに可愛らしい。
 何だかやけに得意げな沖田の顔をまじまじと見つめながら、ああどうやって返事をしよう、と他人事のように考えた。急な展開に頭が回らない。
 この場合何が一番の問題なのかと言えば。嫌ではないというか断る理由が見つからないというか、むしろ心が揺れている自分自身なのだろう。

 ……ああ、どうしよう。ふたり、って言葉がこんなに嬉しいものだなんて思いもしなかったんだ。


END


 

 


携帯からでっす。外でも気軽に打てますが誤字脱字チェックが難しいのが難点です。(後で見つけたらなおします…)
添付写真は無●の家具カタログです。
コレを見た瞬間にぶわっと妄想しました。…何より●印に謝れって話ですかね…
同棲沖新!(笑)


2008/02/07

(UPDATE.2008/6/19)

 

 

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