青春遊戯【放課後のひみつ】 長いマツゲだなァ。 プリントを解く新八の顔を凝視しながら、そんな事を思った。 目線が下を向いているからどうしても伏目がちになる。そうすると目元を縁取る睫毛の長さが際立って見えるのだ。 地味だの眼鏡だのツッコミだの言われている新八だが、決して崩れた顔立ちではない。 というか、姉に似たその造詣はどちらかと言えば可愛らしい、という分類に位置するのではなかろうか。普段は眼鏡に隠れてそうそう分からないけれど。 あ、瞬きした。 考えてる時に人差し指でペンを叩く、っつーのは癖だろうなァ。本人知らねーだろうから、言ったら驚きそうだ。 一挙一動を、余すことなく見てやろうとばかりに視線を注ぐ。 ちなみに沖田の前に置かれたプリントは白紙のままだ。 やる気が失せた、ではなく最初からなかった、というのが正しい。 「……ちょっと沖田さん」 顔を上げた新八が、じとりと沖田を睨む。 怒っているのと困惑しているのとが、おそらくは半々ずつ。そんな顔だった。 沖田は返事の代わりに片手を上げてみせて。 「さっきから凄い視線感じるんですけど。気が散るんでやめてください」 「なんでィ、俺が見てたっつー証拠はあんのかィ? とんだ自意識過剰だなァ」 「隣に座って見られてたら嫌でも気付くわ! つうか顔近い、近いからね!」 シャーペンを持っていた新八の手が沖田の額に触れた。と思うとぐい、とばかりに後ろに押されて。 そうされてからようやく、やたら近づいて見ていたのだということに気付かされた。 ナルホド、あそこまで近づいてちゃ気付かれるわけだ。 なんて、一人納得してみたりして。 「あのね沖田さん……少しは、いやもういっそ素振りだけでもいいから真面目にやろうって姿勢見せてくださいよ。分からないとこあったら一緒に考えますから」 「前向きに考慮してみないこともないこともない?」 「なんで疑問系?! しかも分かりにくい!」 「いやァ、なんつーかよォ」 「? なんですか」 首を傾げる新八に、沖田はにやりと笑う。 それを目の当たりにした新八が口の端を引きつらせるのが見えた。だが遅い。 沖田の手は新八の腕をとっくに捕らえて、逃げる道など塞いでいたからだ。 この破天荒なクラスに在籍していて、いい加減危険感知信号の察知度合いは上がっていると思うのだが。 まーだまだ、教えてやらねェといけねェみてーだなァ。 ここはそう、親切な俺とか俺とか俺とかが。 「近くで見てたらムラムラしてきたんでィ。な、ちゅーしてもいいかィ?」 「は?!」 「つーか拒否権ねェけどな」 だってホラ。 学校で、なんて青春の1ページとしては間違ってもいないだろうから。 抗議しそうな唇は、有無を言わさず問答無用で塞いでしまえ。 END |
Web拍手掲載期間→11/1〜2/26 放課後の教室でちゅーは青春だと思う。 言うまでもなく付き合ってる二人です。 |