【シザーハンズパロ】(沖新ver.) しゃきん、しゃきん、しゃきん。 庭先から軽い物音が聞こえてくる。 欠伸をしながら縁側まで向かえば、予想通り庭に彼の姿があった。 「新八ィ」 呼べば、それまで規則正しく続いていた音がやむ。 丁度沖田に背を向ける様に立っていた新八が、くるりと振り向いた。 「沖田さん。おはようございます」 「おう」 律儀に頭を下げて挨拶をしてくる新八にひらりと手を振り、またも欠伸をした。 それを見た新八がもうすぐご飯みたいですよ、と穏やかに笑いながら告げてくる。 けれど沖田は不機嫌そうに眉をひそめた。 何か悪いことを言っただろうか、とばかりに首を傾げる新八に向かって沖田はぴっと人差し指を向けた。 「朝っぱらから何やってるんでィ」 「剪定ですよ」 「仕事なんざしなくていーつっただろうが」 「そういう訳にはいきませんよ。お世話になってるんですから」 困ったように言いながら、何気ない仕草で新八が指を揺らす。 かしゃ、と乾いた音が鳴った。 音につられる様に己の手を見下ろし、その瞳に淋しさとも哀しさとも、どこか懐かしい物を見やるともつかぬ色を浮かべる。 ハサミの手を持つ、アンドロイド。 不用意に何かに手を伸ばすことの出来ない新八は、けれどその手とは正反対に穏やかな性格をしていた。 「それに、僕にも出来ることがあるのは嬉しいんですから」 「……そーかィ」 「そうです。それに案外楽しいですよ、こういの」 「そりゃァよかった」 「はい」 お人よしだなァ、アンタは。 言外にそう含ませたのだが、伝わらなかったらしい。 新八は、今まで自分を造ってくれた博士以外とはマトモなコミュニケーションをとったことがないと言っていた。 言葉の裏側に潜ませたものに気付けないのも仕方ないことなのだろう。 笑いながら頷く新八に呆れ、毒気を抜かれた自分を自覚する。 沖田は軽く頭を振ってから、草履を突っ掛け庭に出た。 草の匂いが強く香る。 草を刈るとその香が強くなるのは何故なのだろう。 長く居たら匂いが移りそーだなァ。 ぼんやり考えていると、しゃきりしゃきりという音が再開される。 見やった新八の横顔は、先ほどの言葉通りどこか嬉しそうだった。 楽しいのは構わない。 けれど。 それが自分ではないものに因って、というのが面白くない。 剪定している植木を動物の形にでも切らせようか、などと思いながら新八に近付いて。 手を伸ばせば触れられる程の距離に立ち、ジッとその顔を凝視する。 ああでも、イタズラより何より。 「なァ、新八ィ」 キスの一つでも、してみせたら。 どんな顔で、何を言ってくれるだろうか。 END |
Web拍手掲載期間→2006.10.26〜2007.01.04 |