絶望も痛みも力に変えてやろうじゃあないか。(その挑戦、しかと受け取ったぁぁぁ!) ◆銀・DVDシーズン其の弐 8巻ジャケに物申す沖新◆ はいオーケー。 どこか間延びした声に告げられ、沖田はひょいと立ち上がった。 勿論その際に己の刀を腰に差すことも忘れない。 隣に座っていた銀時は未だ座ったまま、頭に引っ掛けていたアイマスクを取ろうとしている。が、紐が髪に引っ掛かったらしくあれ、などと首を捻っていた。 苦戦しているのを横目に見ながら、助ける気など毛頭ない。 と、そこに。 「二人とも、お疲れ様です」 「何でィ、居たのか」 近寄ってきた人物に声をかけられ、沖田はそちらを向く。それが誰か、など近づいてくる足の運びで既に分かっていた。 新八だ。何故ここに居るのだろう。 柄にもなく浮き足立つ自分を感じながら、けれど口にするのは天邪鬼甚だしい言葉。 既に銀時のことなど視界からも思考からも消えていた。 労いの言葉を口にした新八は、沖田の第一声にムッと眉を寄せる。 「居ちゃ悪いですか?」 「いや、全ッ然気付かなかったからよォ。流石地味眼鏡の異名を取ってるだけあるなァと」 「誰が地味かッ! 労いの言葉をかけにきて何この理不尽な扱い?!」 ああもう、と言いながら新八の表情は口調ほどに苛立ったものではない。 おそらくはもうこの程度のやり取りなど予想の範疇なのだろう。 相変わらずいーツッコミするなァ、なんて思いながら、ふと見やった新八がその手に紙コップを持っているのに気付いた。 「お、いーモン持ってんじゃねェか」 「あ、どうぞ。元々これ差し入れようと思ってたんですから」 「頂くぜィ」 中身はコーヒーだった。 一口飲めば、体の中からふわりと暖かくなる。 砂糖の加減が沖田好みで、僅かに瞠目した。好いている人間が何も言わずとも自分のことを察してくれる、というのは存外気分がいいものだ。 思わず緩みそうになった口元を隠すように、コーヒーを呷る。 「おーい新八。ちょっとコレ、取ってくんない?」 「あーあもう、何やってんですか。ちょっと、それ以上いじらないでくださいって」 銀時に呼ばれた新八が、ちょっと行ってきますね、と言いながら沖田の前から離れる。 コーヒーを飲みながら、銀時の髪と格闘している新八を何となく見やっていた。 ブツブツと文句を言いながら、けれど決して嫌そうな顔ではない。 新八にとって万事屋の二人は家族のようなものなのだ、と。分かってはいるし、本人の口からも聞いている。 それでも。 頭で分かっていても心が納得出来ない。なんて厄介な感情を抱いてしまったことか。 「あれ、新八。お前一人?」 「そうですよ。買い物途中で寄っただけですから」 「そしたら原チャ乗ってくか? 俺はもうこれで終わりだし」 「そうなんですか? じゃあ頼んじゃおうかな」 やべェ。苛々する。 口を開いたら触るなだとか喋るなだとかカッコ悪いことを言ってしまいそうな気がして、紙コップの端にがじりと歯を立てた。 「沖田さん、3Zの衣装に着替えお願いしますねー」 「……おう」 スタッフから声がかけられ、そういえば自分にはまだ撮影が残っていたのだと思い出した。 飲みかけのコーヒーの残りは、あと半分ほど。 絡まっていたアイマスクとの格闘が終わった新八は、今にも帰ってしまいそうな様相で。 帰るなよ。俺を置いて? 冗談じゃねェ。 「新八ィ」 「はい?」 「飲み終わらねェや。これ持って待ってろィ」 「え」 告げて、有無を言わさず紙コップを手渡した。 新八が状況把握して何か言い出す前に、とポケットから取り出した硬貨を銀時に向かって放る。一番額の大きい硬貨を二枚。 突然のそれにも関わらず、銀時は外すことなく受け取った。 「旦那ァ、依頼でさァ。助手お借りしやすぜ」 「依頼ならしゃーねえか。まだ未成年だから、遅くなるまで引き止めないでよね警察サン」 「野暮なこと言ってっと蹴られやすぜ、なァ新八?」 「……まだ残るとも言ってないんですけどね。勝手に話進めないでくださいよ」 苦笑しながら言う新八に、沖田は不遜に笑ってみせて。 新八が己を受け容れてくれる事に満足しながら、ぐいとその腕を引いた。 「慣れねー撮影で疲れてる恋人に癒しをくれてもいいだろィ?」 耳元に囁けば、隣に立っていた銀時にはそれが聞こえたのだろう。呆れたような顔をされたけれど。 当の新八が肩を竦めて仕方ない人ですねえ、と言うに留めてくれたので。 多分、周囲が思っている以上に、この関係は上手くいっているのだ。 「……そうやってあからさまだから、一緒の場面なかなかねーんじゃねえの?」 うるせーですぜ、旦那。 END |
物申ーーーす!!! というわけで補完補完。タイトルは8巻ジャケ見た瞬間に脳内に思い浮かんだ言葉。 こんなのに三日もかかったよガビーン。 いやあ、うん、自分ホント沖新好きなんだなーと。 だって7巻ジャケの土高土にはそんなに反応しなかったのに。8巻のジャケをアマゾンで見た瞬間に「ちょ…っと待てェェェ!」となってもーたから。 いーです。自分で補完したもん。自給自足したもん。 ぐす…っ(涙) いーさ。マイナーだなんて知ってるさ。 重箱の隅を突付いてもなかなか接点ないなんて知ってるさ。 だからこそ燃えるんじゃねぇかァァァ! 捏造が座右の銘です。(にっこり) 2008/01/28ブログ小話 (UPDATE.2008/6/19) |