誰より一緒にいたいだけ。 ◆銀・沖新・「俺の恋路を邪魔する奴ァ、俺に斬られて死んじまえ。」の続き的な話◆ 山崎に向かってバズーカをぶっ放した後、沖田はその足で万事屋に向かっていた。 とりあえず元凶を叩きのめして幾分かスッキリはしたものの、まだ胸の内に燻るもやもやとした不快感は完全に晴れてはいない。 この荒んだ心を癒すにはどうあっても新八の存在が必要不可欠だ、と結論づけての行動である。 ちなみに本日の当番である市中廻りはサボる気満々だ。 沖田に言わせると普段から馬車馬のようにこき使われてんだから、多少は癒される時間ってのも必要でさァ、それが長く働く為だっつーんなら尚更でィ、ということになるらしいが。(実際にこれを言えば土方辺りが元々開いている瞳孔をさらに開いて怒鳴りつけてくるだろうことは想像に難くない) いざ万事屋に辿り着き、呼びかけもそこそこにガラリと戸を開ける。 素早く視線を走らせた三和土には、銀時のブーツも神楽の靴も見られなかった。あるのは新八の草履だけだ。どうやら二人とも出払っているらしい。 好都合、と思わず口元を緩める。 何を言われようと引くつもりはなかったが、煩く言われないならそれにこしたことはない。 「はーい? どちら様ですかー?」 奥の部屋から新八の声がする。 戸を開ける音が聞こえたのだろう、少し慌てているようだ。ぱたぱた、という足音がいつものそれよりやや早い。 「あれっ、沖田さん?」 「邪魔するぜィ」 「まあ、いいですけど……何か御用ですか?」 「会いに来た」 「はあっ?」 目を丸くする新八を置いて、靴を脱ぐとずかずかと上がり込む。 もはや万事屋も志村家も沖田にとっては勝手知ったる、という冠付きで評される程に通い詰めた場所になっていた。まあ元々沖田は遠慮をする、なんて殊勝な性格からは程遠いのだが。 居間に辿り着いた沖田は、来客用のソファに腰を下ろす。 やや遅れて新八が追いついてきた。おそらくは脱ぎ散らかされた沖田の靴をきちんと揃えていたのだろう。 決して恵まれているとは言い難い育ちながら、新八は真面目で行儀が良い。 「お茶淹れますね」 「いい」 「え?」 「いーから、こっち座れって」 台所へ向かおうとした新八を制し、手招く。 首を傾げながらも言われるままに近づいてくる新八は、相当にお人よしだと思う。指示しているのは自分だけれど。 隣に座った新八は、沖田の言葉を待つように視線を向けてきた。 沖田はそれににやりと笑って。 「傷心な恋人を慰めてほしいんでさァ」 「傷心って……ちょっと、沖田さん?」 「休ませてくれィ」 上体を傾けて、隣に座った新八の肩に頭を乗せる。 慌てたような途惑うような声が聞こえてきたが、退くつもりなど毛頭ない。 新八もそれ以上は何も言ってこようとはせず、沖田は本格的に寝てしまおうと瞼を伏せた。 ゆっくりと弛緩していく体を自覚しながら、ふと気付く。 先程山崎に向かってバズーカを撃ってきた硝煙が、未だこの身を取り巻いているに違いないという事。 それに気付いた新八は、敢えて何も言わずに己を受け容れてくれているのだろうという事。 ……しまったなァ。 大した理由でもないのに、気ィ遣わせちまったか。 さすがにばつが悪いと思いながらも、既に眠りに入ろうとしている意識は止められるものでもなく。 「今度、何か奢ってやらァ」 「期待してますよ」 「おう」 「おやすみなさい」 とりあえず、山崎は後で確実に息の根を止めておこう、と誓って。 沖田の意識は、眠りに落ちた。 END |
遅筆金沢にしては最近やたらSS量産してるなー。 というわけでジャケに物申す小話の続きです。ちゃんと新八も出てくる沖新です。 ふっと神が降りてきて携帯に打ち込んでたんですが指が痛くなってきたのでPCに送って続きを打つ、という無駄な工程を踏んでおります。最初っからパソでやれよっていう… 王道膝枕じゃなくて、敢えて肩にもたれるっていうのをやりたかった話。 2008/02/13 (UPDATE.2008/6/19) |