デンジャーゲーム


◆3Z沖新・ポッキーゲーム◆

「おいおい、敵前逃亡は士道不覚悟でさァ」
「う……」

 逃げ腰になっていたら、肩を掴まれた。言葉になくとも、逃がす気はねぇぜ、と告げられているような。
 にやぁり、と悪そうな顔で笑いながら沖田が言う。その手に握られているのはポッキーだ。
 悪い顔と可愛らしい菓子とがアンバランスでおかしいのだが、それに突っ込みをいれることもできない。
 何故ならそのポッキーにこそ、今新八は追い詰められているからだ。

「ルールは知ってるよなァ?」

 ひらり、目の前でポッキーを振られる。新八は恨みがましい目でそれを睨んだ。
 ポッキーゲーム。二人の人間がポッキーを両端から同時に齧り、食べ進めていく、という至極単純なゲームだ。途中で耐え切れずポッキーを折ったり、逃げたりすれば負け。

 事の起こりは、昼食後に誰かがポッキーを出してきたことにある。現時点で自分の置かれている状況は切羽詰りすぎていて、誰が持ってきたかまでは忘れてしまった。
 ともかく、ポッキーがあるならポッキーゲームだ、なんて理不尽なことを沖田が言い出したのだ。
 男子高校生なんて、基本面白ければなんでも盛り上がる人種だ。あれよあれよという間にくじまで作り、それを引く羽目になった。
 こんなことになるなら、あの時にやめておけば良かった。逃げるのかだのと言われても、気にせずに。
 どんなに後悔しようと、現状は変わらない。

「さっさと咥えろっつの」
「んぐっ」

 ひたすらに後悔をしている所に無理矢理ポッキーを突っ込まれ、新八は思わず呻いた。
 眉を寄せたまま沖田を睨むが、そんなものどこ吹く風の体だ。それどころか、新八と目を合わせるとにやんと笑ってみせる。
 肩に置かれていた手が腕に滑る。と思うともう片方の腕も掴まれた。
 逃げ場がない、と冷や汗をかいたのとほぼ同時。

「舌入れてやるぜィ」
「! ぅーッ!!」

 ぼそ、と囁かれた言葉に目を見開く。
 ヤバイ、この人はやると言ったらやる。目が、目が怖いんだよォォォッ!!
 逃げようとするが、掴まれた腕にぐっと力を込められた。何をどう上手くやったのか、腕が上手く動かせない。
 血の気が引くのを感じた、その瞬間。

 ばり、と音がした。
 沖田が新八の咥えている反対側から、ポッキーを齧り始めたのだ。

 逃げられないゲーム、スタート。


END

 


ポッキーゲームっていいよね♪
ブログ小話はこれくらい短いのでいきたいなぁ。
とりあえず新八はこの後べろちゅーされたと思います。
女子は皆どっか行ってるカンジ。姉上いたら殺されるもんね、これ(笑)
2008/5/24


(UPDATE/2009.4.4)

 

 

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