【化かし化かされ】(沖→新前提沖田と銀時、世界観そのままで妖怪パラレルもどき)



「過保護にしてんなァ、伝説とも謳われた妖が」

 不機嫌を隠そうともしない声をかけられてきたのは、沖田だ。
 銀時は言われた言葉に反応するでもなく、いつものようにだるそうな目を向けただけで。
 それがまた苛立ちを煽ったのか、沖田が舌打ちをする。

「俺ァ、アンタほどの奴が、なんであんな子狐を懐に入れてんのか、理解出来ねぇだけでさァ」
「……あのさァ沖田くん。新八が靡かないからって俺に八つ当たりしねーでくんない?」

 新八はお前が言うほど子供でもないよ、と付け加えれば、ますます面白くなさそうな顔をした。
 感情が、激情が隠せない辺りはまだまだ若いな、と思う。
 血の気が多くなければ、一番に戦場に飛び込んでいくような位置にいないか、とも。
 こちらを見据えてくる沖田は相変わらず無表情だが、その目の奥にギラギラとした光が宿っているのが見て取れた。

「アイツの事はアイツに任せてるだけだ。俺に言われてもどうしようもねーよ」
「そうですかィ」
「怖ェ目で睨むのやめてくんない? 仮にも警官がか弱き一般市民にそんな目ェ向けちゃいけねーと思いまーす」
「アンタがか弱きゃ、本当の一般人なんざマッチ棒以下だなァ。笑えやしねえぜィ」

 吐き捨てるような言葉。
 どうやら相当に機嫌が悪いようだと知り、頭を抱えたくなった。
 触れるもの全てを切り裂くが如く尖っている中二病もどきなんて、大串(仮称)だけで充分だというのに。
 面倒なことになったなあ、つうか新八、何やったんだか。
 沖田がこうも自分に噛み付いてくるなんて、新八が何かしたに違いない。

「まーったくさぁ……なんで上司といい部下といい、天狗のくせに狐に惚れるかねえ。まーこのご時世、恋愛は自由ですけどー? 関係ない人巻き込まないでくれませんかねーえ?」
「……相変わらず食えないお人でさァ」
「長く生きてりゃ小狡くもなるもんよ。ま、銀さんイイ人だから? 一つ、言っといてやろうかな」

 わざと回りくどい言い方をすれば、沖田がますます不機嫌そうに目を細めた。
 けれど銀時の言葉、その内容は気になるようで黙ったまま、目線で続きを促してくる。
 ああやっぱり若い若い、となんだか面白いような気分になった。

「狐ってよ、追われるのを楽しむもんだぜ?」

 これ見よがしに尾を靡かせて。
 尖った耳を小さく動かして見せたりして。
 時折振り向き、まるで戯れてでもいるかのような。
 追い、追われ。どちらが獲物か。

「……上等でさァ」


END




志村姉弟は狐。新撰組初期面子は烏天狗集団(後から入ってきた中には人間もいたり他妖怪もいたり)。

 



Web拍手掲載期間→2009/12/20〜2010/10/4

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