雨に紛れて、君と二人で ◆銀・沖新・雨ですね◆ ぽつぽつ、雨音がする。 まどろみを破られ、新八はもそりと起き上がった。 そういえば天気予報で、夜半から雨になると言っていたような。 横にいる沖田を見やると、それはもう気持ちよさそうに寝息を立てていた。 仕事をサボっての昼寝ではないからか、沖田の顔にいつものアイマスクはない。 子供みたいな顔して寝るなあ、と小さく笑う。 窓を開けて確認したわけではないけれど、聞こえてくる音から察するに雨はなかなかに激しく降っているらしい。 洗濯物は乾かないし、外を歩けば濡れて汚れるし、雨の日は基本碌なことがないからあまり好きじゃない。だけど、一つだけ。 「雨が止むまで帰れませんね、沖田さん」 「……気付いてたのかィ」 少しバツが悪そうな声で言い、沖田がぱちりと目を開ける。 本当を言うと確信があったわけではないのだけれど(沖田が本当に寝ていたら独り言で済ませるつもりだった)、返事があったのが嬉しくて思わず笑う。 欠伸交じりに体を起こした沖田だが、すぐにふらふらと新八に倒れこむようにもたれかかってきた。 背中に張り付くようにもたれてくる沖田は、今まで寝ていたからか常より体温が高い。 「濡れるのは御免だなァ」 「じゃあ、泊まっていきますか?」 「そーさせてもらいまさァ。新八も……」 言葉が途切れた。どうやら欠伸をしているらしい。 耳の横でふっと息が吐かれる音がして、思わず肩を竦めた。 「雨が止むまで、ここに、いなせェ……」 言葉の最後は、半分以上眠りかけながらようやく紡がれたものだった。 それでも耳元で言われれば、嫌でも聞こえる。 背中が暖かい。眠ってしまったのだろう沖田は容赦なく体重をかけてきたけれど、不思議とそれを重いとか苦しいとは微塵も感じなかった。 雨はあまり好きじゃない。だけど、一つだけ。 濡れるのは嫌だ、なんて分かりやすい口実で一緒にいられる時間が増えるから。それだけは、歓迎すべき点かもしれない。 降りしきる雨に紛れて、互いの存在をいつも以上に近くに感じられるから。 「もう、少し……」 だからもう少しだけ、止まないでいて欲しい。 ここにいろ、と抱きしめられた腕の暖かさに、その幸せに、思わず滲んでしまった涙が乾くまでの間だけでも。 新八の願いを知ってか知らずか、未だ音を立てて降り続ける雨は、止む様子はなかった。 もう少し、だけ。 END |
関東雨ですねィ。っていう話。 とうとう天気でも妄想するようになったか自分(笑) お粗末さまでしたー! 2008/03/14 (UPDATE/2009.4.4) |