日々徒然ときどきSS、のち散文 |
2005/05/13(金) |
[SS・ミスフル]サイキョー線て痴漢が多いんだって。知ってた?(雑談/兎と猿) |
「専用車両……」 ぶつぶつ、と。 何やら考え込む顔で呟く天国に声をかけたのは兎丸だ。 切り込み隊長、かつ好奇心旺盛な彼はいつもの如く天国の腰にがし、と飛びつく。 「兄ちゃん、さっきから何言ってんのさ?」 「いや女性専用車両が出来ただろ? でもあれって賛否両論じゃんか。俺はまあどっちでもいい派なんだけどさ。そしたら男性専用車両も作ったらいいのかどうか、っつーのを考えてたわけだ」 「またどうでもいいこと考えてるねー」 まあ兄ちゃんがどうでもいいようなことを真剣に考えるのはいつものことだし僕もそれ見てると面白いから別にいいけど。 ……さらりとエグイというか黒い発言をした兎丸に、けれど天国は気にした様子もない。 というか多分、気付いていない。見た目お子様の落とした毒発言に。 それを鈍い、と言い切ってしまうのは簡単だが、それでいて肝心な時には誰より聡かったりもする。 鈍いにしろ聡いにしろ、兎丸の発言を気にする様子のない天国は、自分の腰に引っ付いている新手のウエストポーチのような彼に向かってぐわっと牙をむいた。 「どうでもよくねーよ! お前さては痴漢に遭ったことないからそういうことが言えるな?!」 「ないよそんなの」 「すっ、涼しい顔で返してくるなよ!」 「だって僕あんまり電車乗らないし。ていうか兄ちゃん、その発言自分が痴漢に遭いましたって宣言してるようなもんだけど」 「うっ……」 至極冷静な兎丸の返答に、天国は言葉に詰まる。 きゅうっと寄せられた眉とヘの字に曲げられた唇に、兎丸は自分の言葉がビンゴだったことを知った。 うわあ、痴漢かあ。 世の中には痴女とか言う人もいるらしいし、何か色々大変だよね。 ……ってでもちょっと待った。 「でも兄ちゃん、電車通学じゃないじゃん。いつ電車なんて乗ったの?」 「こないだのー…部活休みん時に、ちょっと都内まで出たんだよ。そん時」 「うわあ、何て言うか、災難だったねーってぐらいしか言えないけど……」 「慰めるな! 余計落ち込むわ!!」 叫んだ勢いで腰にくっついていた兎丸を引き剥がし、天国はぶるぶると頭を振った。 何やら色々と思い出してしまったらしく、涙目だ。 興奮したせいで些か赤らんでいる頬と、潤んだ瞳。 そんなものを間近で見た兎丸は、ああまあ確かに、と思う。 ある種のマニアにはたまらない素材なのかもしれない、と。 突飛な言動が多いせいか女子からは煙たがられている天国だが、黙って立っていれば見た目は悪くないのだ。 天国はカワイイ、とかカッコイイ、と言うよりもユニセックスめいた風貌をしている。 服装をそれなりにして憂いた表情で黙って立っていたりなぞしたら、男女ともに人目を引くには充分だろう。(明美変身時は最後の良心なのか何なのか足の処理までは行っていないけれども、初回に比べてメイクテクが上がってるのは多分気のせいじゃない) 本人は悲しいかな、そんなことには全く気付いていないけれども。 「分かるか?! 休み満喫して、こうイイ感じに疲れたーっていうか充足感味わいつつ手摺りに掴まってちょっとうとうとしてたその瞬間に、ぶよぶよした指に足の内側撫でられたあの気持ち悪さ!!」 「生々しいね……」 「あれマジで声出ねえ! 出せねえ! 半端なくキショいし怖ぇの! 痴漢は犯罪だ! あんなことする奴は生きてる資格ねえぞ!!」 じゃあ連載第一回目でいきなり覗きをやっていたのはどうなのか、と。 口にしかけて、それは可哀想かなと判断した兎丸は押し黙った。 あの時はあの時でちゃんと制裁を受けていたし、見ず知らずの親父(発言より推定)に足を撫でられるのは兎丸でも辞退したいところなので。 普段は色々な意味で勇猛果敢な天国だが、今回のことは相当キツかったらしい。 背後にブラックホールを出現させて何やらぶつぶつと呟き始めた天国を見ながら、兎丸は先日見たとあるニュースのことを思い出していた。 「ねえねえ、兄ちゃんもしかして京浜東北じゃなくて埼京線乗った?」 「あ? 乗ったけど」 「やっぱりねー。あのね知ってた? 僕もニュースでたまたま見たんだけどさ」 「だから何だよ」 「埼京線てね、痴漢が多いんだってさ。だから女性専用車両の導入も早かったらしいよ」 災難だったねー、女の人が減ってたから兄ちゃん餌食にされちゃったんだよ。 言う兎丸に天国は一瞬黙り込んで。 「あ、アホかぁぁぁっ!! 若けりゃ何でもいいっつーのかー!!!」 「誰でもいいから電車で痴漢なんてことしてるんじゃないのかなあ」 「そーゆー問題じゃねえんだよっ!! ああもートラウマだっつの電車乗れなくなったらどうすんだチクショー!!!」 ぎゃいぎゃいと騒ぐ天国を見ながら、痴漢は犯罪だなあ、と改めて思う。 幸いというか何というか、自分はそんな経験はないけれども。 専用車両がどうとか痴漢撲滅がどうとか多分本人も何を言っているのか分からないのだろう天国の言葉を聞きながら、兎丸はふと口を挟んだ。 それはもう、至極冷静に。 「でもさ兄ちゃん、男性専用車両作っても意味ないよ。分かってる?」 END わー何だこのワケ分からん話。 いやあの、ニュースで見た「埼京線は痴漢が多い」っていうのを書きたかっただけなの、で。 私も時々使う路線ですが、ラッシュ時には乗らないんで関係なし(笑) あとはあれだ。 天国のお顔はやっぱり中性的で良いんですね信也てんてー。というね。 だってホラ、本誌がね……ヅラとれただけで「あ、男」て! そんな設定大歓迎ですから(笑) ていうか書き終わらなかったのでアップロードは5/14になってしまいましたが、あくまで13日に書いていたので13日ということで(ぇー) |