日々徒然ときどきSS、のち散文
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2004/10/12(火)
SS・+なお話]タンス イン ワンダーランド(ミスフル+戦国BASARA)


 いつからだっけ。
 俺の部屋のタンスが、どこでもド●状態で異世界との交流に使えるようになってしまったのは。

 …いや使えるっていうか使われるっていうか。
 今日も今日とて、俺の部屋には来客あり。




「猿野殿ぉ! 某、かような代物は初めて食すでござる!」

「ちょ、旦那、どさくさに紛れて人の分まで手を伸ばさない!」


 赤いのと迷彩のとが、俺がお茶請けで出したマシュマロを騒がしく食べている。
 ……緑茶にマシュマロを出すのもどうかと思ったんだけどさ。
 煎餅がなかったんだよ、もう。
 まあ珍しいだろうから、楽しんでもらえるかなーって、さ。
 そしたらまあ、予想以上の反応が貰えたっていうか。
 て、いうか。


「……あの」

「あ、はいはい。悪いね、人様のお宅でうるさくしちゃって」

「あ、いや、それはいいんすけど。あの、失礼ですけど……ホントに真田幸村さんと猿飛佐助さん?」


 思わず、再確認。
 ぐらいさせてくれよ、ホント。頼むから。
 いやまあ、あのタンスが人を吐き出すのは初めてじゃないんだけどさ。
 前に眼帯六刀流どっかの族長ですかオイ、な伊達正宗がめっちゃ態度でかく出てきてくれたことがあるぐらいだからさ。
 …あーそういや伊達さん、次に来る時には調味料類貰って帰るから用意しとけとか理不尽なこと言ってたよなー。はは、思わず遠い目しちまうっつの。

 でもあの、そういう現象が起こるタンスだってのを認めたっつってもさ。
 驚くもんは驚くんだっつの。
 俺の問いに、赤いのと迷彩のは騒ぐのをやめて。


「うむ、某は武田軍が将が一人、真田源二郎幸村でござる」


 口の中に入っていたマシュマロをごく、と飲み込んで、赤いのこと真田さんが居住まいを正してそうハッキリ言い切った。
 次いで、湯呑を卓の上に置いた迷彩の人がにこ、と笑う。
 あ、ちなみに今は俺の部屋から居間に移動してる。
 いやだって俺の部屋そう広くもないし。
 大の男が三人で座ってお茶するには、それ相応の空間が欲しいだろ。


「んで俺は真田忍隊の長やらせてもらってます、猿飛佐助です」


 人好きのするような笑顔だけど……何かこう、裏を持ってるっていうか。
 あ、いや、別にそれが俺に対して向けられてるってんじゃないんだけどさ。
 まあ、忍びっていうぐらいだしなあ。色々あるんだろうなあ。
 この間来た伊達さんも、再びもくもくとマシュマロを頬張り出した真田さんも、どこか背中にぴんと張り詰めた糸みたいなものを持ってるって感じがする。


「伊達の旦那から未来のことは聞いてたけど……しかし、ホント面白いね、ここ」


 諦めたのか何なのか、自分の皿を真田さんの前に移動させながら、猿飛さんが言う。
 部屋の中を見回す様子は、新しいものを見る時のようでいて、でもどこか油断がない。
 伊達さんもそうだった。
 あーでもそれは、一心不乱にマシュマロ食べてる真田さんも一緒か。
 俺が不遜な動きをすれば、一瞬で戦闘体勢になるんだろうなあ。


「あー…よければ、夕食も食べます? 俺が作るんで、大した物は出来ませんけど」


 あれれ。
 何で俺、こんな誘いかけちゃってんだ?
 タンスが吐き出す突然の来客には辟易してた筈なのになあ。

 でもホラ、一期一会っていうもんな。
 縁は大事にしとかないと。
 っていうかどうせ顔付き合わせるなら、やっぱ楽しんでもらいたいっつーか。
 あーもー俺ってちょー健気じゃね?
 ……自分で言うなってな。


「誠でござるか、猿野殿!」

「や、そっちの時代と味付けとか違うと思うんで、口に合うか分からないっすけど」

「いや、先ほど頂いた菓子も、この菓子もまっこと美味でござる! 未来には美味なものが沢山あるのだな!」


 先ほど……ああ、そういやマシュマロの前にカステラも食ったんだよ真田さん。
 真田さんと猿飛さんが俺のタンスから出てきた時、ちょうど俺が食ってたヤツ。
 未来に来て驚くより何より、俺が持ってる食べ物に目を奪われてんだもんなー…
 あの時の真田さんは凄かった。
 目がきらっきらしてて。
 誰なのかとか、ああまたこのタンスやりやがったとか、そういうの考えるより早く思ったことと言えば。

 犬だ、ワンコがいる。
 …だったもんなあ。
 まさかかのご高名な真田幸村とは知らず、その節は失礼なことを。
 って別に面と向かって言っちゃったわけじゃねんだけどさ。
 何となく勝手に気まずいので、勝手に謝っておく。

 美味なものも何も、菓子しか食べてねえっすよ。
 それだけで判断するのか、いいのか。
 基準は菓子なのか。
 つーか甘いもの好きなんだなあ。


「俺たちとしてはその申し出は嬉しいけど……平気?」


 聞いてくる猿飛さんは、何だかんだで気遣い魔人なんだろう。
 仕事柄染みついちゃってる姿勢とかは、まあ仕方ねーか。
 悪い人じゃなさそうだし。
 そもそもこの真田さんの下で働いてるって時点で、悪人なわけないよなあ。
 さっきからの真田さんと猿飛さんの一挙手一投足を見てると、相棒とかそういうのよりも世話焼き女房…というかむしろお母な感じだよ、猿飛さん。
 俺はそんな猿飛さんに、大丈夫ですよー、なんて言いながら手を振ってみせた。


「今日は俺、一人なんで。少し賑やかなくらいの方が、食事は楽しいでしょう?」

「それじゃあ、ご相伴に与りますか。で、いいんだよね旦那?」

「うむ。かたじけない、猿野殿!」


 ということで、一緒に夕飯決定らしい。
 うーん、何にすっかな。家庭料理の定番、肉じゃがでも作るかな。
 あんま味付けが濃いのはダメだと思うんだ。
 味覚の違いもあるだろうし。
 ……真田さん見てるとカレーとか出しても平気そうな気もすっけど。


 ……ああクソ、やべえ。
 何だかんだで受け容れてんぞ俺。
 っつか、こういうのも悪くないとか思ってんぞ。
 こないだの伊達さんの時もまあいいか、とか最終的に思ってたもんな。
 や、だって普通に普通の人なんだもんよ。
 もっとこう、悪人っぽいとか無駄に高圧的とかそういうのあるなら、俺だって態度違ってくるんだろうけど、さ。
 適応力ってーの?
 何だかんだで、俺はあのタンスがもたらす非日常に慣れ始めているらしい。

 ……ホント、何作ろう。



END



久々の+なお話ことジャンル混合。
金沢的今の燃えをミックスしてみた結果、こんなんなりました。

これ元ネタCM、分かります?
東京ガスのガスパッチョとかいうの。
タンスから織田信長が出てくるやつね。
最近それの新ヴァージョンのがやってて(信長のお料理教室with明智光秀)、おおこれ使えんじゃね? と。
元々あのCM自体好きなんすけどね。面白いのー。
ガリレオが美形になった時は笑ったわー。

面白かったのでまた機会があったら書きたい。
何やら以前に伊達さんが来てるらしいので(笑)(他人事かよ!)
自分の中でうっすらとですが、この話は前に書いた天国in銀魂ワールドと繋がってそうな感じがするなー、とか。

ていうかこのタイトル何とかならんかったんかーい、っていう(笑)


UPDATE/2006/9/30(土)