日々徒然ときどきSS、のち散文
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2004/10/05(火)
SS・+なお話]天然引力と狐目とふわふわと垂れ目。(ミス振り)


天然引力と狐目とふわふわと垂れ目。





 知り合いいたから声かけてくる、そう言って天国が向かった先を何となく目で追えば、そこにいたのは多分自分と同じ年頃だろう男が二人。
 天国よりも明るい茶色のふわふわしたくせっけの髪が一人と、黒髪の垂れ目が一人。
 どんな知り合いなのか、と興味を引かれて傍に寄っていった。


「あーまくに」

「おわ! み、み、耳元でいきなり喋るなこのバカ!」

「らが抜けてますー。ってかどういう知り合いなわけ?」

「メル友だよ。あ、コイツ御柳芭唐っての。ガッコは別なんだけど、コイツも野球やってんだ」


 コイツも、ってことはこの二人も野球やってんのか。
 二人をそれとなく観察するように見やれば、それぞれ対称的な反応をされた。
 ふわふわくせっけはびく、と肩を揺らして後退りしたし。
 黒髪垂れ目は少し眉を上げたけれども、小さく会釈してみせた。


「で、俺のメル友のみーちゃんこと三橋廉、とその相棒の阿部…隆也、でいんだよな?」

「おう。キャッチャーやってる」

「へー。俺は4番でサードー…て、相棒でキャッチャーってことは三橋はピッチャー?」

「あ、う はいっ」


 御柳の問いかけに、三橋はおどおどと視線をうろつかせながらもこくこく頷いた。
 何やら必死の形相で頷くのに、俺そんなにおかしなこと聞いてないよな、と思わず首を傾げる。
 それを見た阿部が、小さく苦笑した。


「んなに必死になんなくても、ウチのエースはお前しかいねーっつの」

「は、う」

「みーちゃんてホンット、投げるの好きなんだなー」


 見てて微笑ましい、などと言いながら天国が三橋の頭をぐりぐりと撫でる。
 髪をかき乱されているにも関わらず、三橋は天国に言葉に嬉しそうに笑っていた。
 それを見ながら案外大物かも、とこっそり考えてみたりして。

 何となく手持ち無沙汰になった御柳は、常備しているガムを口に放り込むべくポケットから取り出した。
 いつも通りのバブリシャス。今日も今日とてシトラスソーダ味。
 かさかさと音を立てていると、何やら視線を感じる。
 送り主は、三橋。
 じいぃぃ、と音がしそうな目で御柳の手元を見つめている。

 目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものだと思う。
 食べたいなー、とか欲しいなー、とか控えめながらもしっかりとそんなことを目線で語られて。
 御柳は手の中のガムを、少し持ち上げて見せた。


「……食う?」

「え、あ い、いただき、ます」

「バブリシャスだけど、平気?」

「基本的に何でも食うよな、お前」


 呆れたように答えたのは、三橋ではなく阿部だった。
 まあ、三橋の嬉しそうな表情からすれば問いかけの答えなど分かったようなものだったけれど。
 外包装を破いて取り出した中身を渡してやれば、三橋は嬉しそうに笑った。


「あ、りがとうっ、御柳くん」

「おー。阿部は?」

「あー、オレは今飴食ってっからいいや」

「俺はいる。くれ」

「しゃーねえなあ。ホラ口開けろ、天国」

「んあー」


 ぺりぺりと包み紙を剥がして、開けられた口にガムを放り込んでやる。
 もぐもぐと口を動かしながら、天国がんま、と呟いた。
 天国の呟きを聞いたのだろう三橋が、うんうんと頷く。

 ああ、何か平和な感じ。
 内心でそんなことを言いながら、御柳も自分の口にガムを投げ入れた。



ゲームセット!












これまたWeb拍手お礼、一人ミス振り祭りより再録です。
ひっそりどころではなく芭猿ですが、阿部も三橋もスルーです。
なんでかってコイツら原作からして夫婦だから。

……すいません。


UPDATE/2005.03.28(センバツ、放映中)