日々徒然ときどきSS、のち散文
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2004/07/07(水)
SS・ミスフル]晴天を祝う声、高らかに(蛇+猿/蛇様誕生日記念)




 晴れた。

 ……晴れた。

 抜けるような青空に、思わず笑った。





   晴天を祝う声、高らかに





 テスト期間は、部活は休みになる。
 それにどこかしら物足りなさを感じないわけではないが、学生の本分はあくまで勉学であると解する蛇神は寄り道をするでもなくまっすぐに帰途に着いていた。
 勿論、帰宅してから自主練を行うつもりではあるのだけれど。


「蛇神センパイ、帰るの早いっすね〜」

「猿野?」


 門扉の前に、見知った顔がしゃがみ込んでいた。
 笑顔でひらひらと手を振っているのは部活の後輩…猿野天国だった。


「SHR終わってから速攻教室行ったのにもう居ないんっすもん。てなわけでチャリで先回り作戦敢行させていただきやした」

「行き違いになってしまったのか。手数をかけたな」

「いえいえ、俺が勝手にやってることですから」


 言いながら、しゃがみ込んでいた猿野は立ち上がる。
 屈託なく笑う猿野は、手がかかるながらもカワイイ後輩であることは間違いなく。
 蛇神はつられるように表情を柔らかくした。


「して、何か用があったのだろう? 如何した?」

「あ、えーっと……」


 蛇神に問われ、天国は落ち着かなげに目線をさまよわせた。
 そうしてから、意を決したようにポケットの中から何かを取り出す。
 出してきたのは、手のひらにのるぐらいの小さな包みだった。

 天国はそれに少し視線を注いで、それから顔を上げる。
 途惑いと決心、それから少しの照れ。
 そんなものが入り混じった表情だった。


「猿野?」

「ええとっ、誕生日おめでとうございます、先輩」


 言いながら、天国は手にした包みをずい、と蛇神に向かって差し出してきて。
 唐突なことに、蛇神は珍しくも瞠目した。
 蛇神は饒舌とは言い難いタイプだし、それでなくとも学年が違えばそうそう接点もない。
 同じ部活の先輩後輩とは言え、正直二人はあまり接触がない方だろう。
 どちらかと言えば、天国は獅子川や虎鉄などとつるんでいることが多いのが事実。

 その、天国が。
 まさか自分の誕生日を知っているとは、そしてこうやって祝いの言葉をくれるとは、予想だにしていなかったのだ。


「誕生祝か。かたじけない」

「や、全然大したもんじゃないんですけど」


 照れているのだろう、前髪を触りながら天国はぱたぱたと手を振った。
 蛇神はそれに穏やかな笑顔を見せ。
 天国の頭を、ぽんぽんと撫でた。


「しかし、よく我の誕生日を知っておったな」

「梅さんに聞いたんす。それに覚えやすいじゃないですか、7月7日って」

「七夕か」

「俺、子供っぽいとは思うんすけどこういうイベント好きなんですよね〜」

「お主らしいな」


 天国の傍らに置かれた自転車のカゴには、おそらくどこかで貰ったのだろう小さな笹が顔を覗かせていた。
 七夕飾りで彩られたそれを、うきうきと手にする様が目に浮かぶ。

 そういえば、七夕を晴天で迎えるのは久々な気がした。
 例年この日は雨や曇りが多かったから。
 些か強過ぎるほどの陽射しが照り付けている空は、きっと夜になれば煌びやかな星空に変わるに違いない。
 それを見て、きっと天国はまた喜ぶのだろう。


「猿野」

「はい?」

「時間があるのなら上がって行かぬか? 茶ぐらい出す也」

「いいんすか?!」

「良いから誘っているのだが?」

「あ、そうっすよね、えと、じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔させていただきます」


 ぺこりと頭を下げた天国の横で。
 飾りつけられた笹が、さわさわと音を立てた。



END





蛇様はぴばーすでー。
なお話でした。
ちうか確か昨年も蛇様の誕生日にお祝い話書いたよな〜。
何気に好きなのか? タイミングがいいだけなのか?
やっぱり神様でございますから、何かあるのでしょうな〜(怒られます)

猿が何をあげたのかは内緒です。
ちうか私も分かりません故。
何気にアクセとかだったりして。

そんなこんなで、今年の七夕は晴れました★
なお話でした。
猿はイベントとか好きだと思う〜…イベント自体よりも、それを口実に騒げるのが好き、みたいな。
祭りが終わった後は淋しくなる人だ(笑)