日々徒然ときどきSS、のち散文
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2004/06/13(日)
[SS・ミスフル]おなまえなあに?(小話芭猿)


「こないださー、本屋行ったんだよ」


 かしゃかしゃかしゃ。
 注いだカルピスを混ぜながら、天国は言う。
 御柳の作るカルピスは原液を惜しみなく使ってくれるから、こうしてよくかき混ぜなければ最後の方で泣きを見ることになるからだ。


「ふーん」

「そんでさ、雑誌立ち読みしてたら子供の親らしい女の人がさ、子供呼んでんだけどさ」

「そんで?」

「トムって呼んでて、ああ最近は名前も色々だなぁ、それともハーフなのかな、とか思ってたら、呼ばれて出てきたのはなんと女のコだった。幼稚園のものらしい制服を着てたからな、間違いはない」


 からん。
 混ぜおわったスプーンを、目の前においてある御柳のグラスに放り込む。
 御柳は気だるげにスプーンを手にすると、自分の分をからからとかき混ぜ始めた。

 夏の音だ。
 なんとはなしに、そう思う。
 グラスと氷がぶつかりあう音、涼しげなそれは風鈴の音と同じように夏を象徴するものだと勝手に考えていたりする。


「そんであんまりビックリしたからよくよく見てたらさ、そのコの持ってる鞄には"こむぎ"って書いてあったんだよ」

「そりゃ"トム"じゃなくて"こむ"だったんじゃねーか?」

「そーみてーなんだよ。びびったね、うん」

「耳遠くなったか、ついに」


 呆れたような物言いにさすがに天国は眉を動かした。
 その内心で呟かれた内容と言えば、こうだ。

 何何、何なわけですか。俺は一応あなた様の恋人、っつーかぶっちゃけ体の関係から言えば彼女的な立場にあるわけで、それは俺としては甚だ不本意なわけだがまぁいいだろう今はそれが言いたいことではないからな。彼氏だろうと彼女だろうと恋人だろうとまぁどれでもいいんだがその口の聞き方はそう言う立場にある相手に対してあまりなんじゃないかと俺は思うわけですよどうですか俺間違ってますかAre you OK?

 ……これを一息で考え、しかも口に出していたとしても噛みもしなかっただろう天国は、さりげなく『コワイ人』だ。
 普段の性格上、なかなかそれには気付かれにくいのだけれど。


「いいか、そこは今俺が語りたい話題ではないのだよ御柳クン」

「じゃあさっさと本題喋ればいーっしょ」

「……そう、俺がそう聞き間違えてしまうくらいだから幼稚園児もしっかり間違えると思うんだ」

「で?」

「あのコはさ、これから先"トム"って呼ばれて傷付いたりするんだろうかなぁ、ってそんなことを俺は考えたわけなんだよ」

「もう会いもしない赤の他人のことをそこまで気にかけるお前が俺はちょっとすげーと思う」


 凄いというか、思考の無駄遣いというか。
 呟かれた言葉に思わず米神が震えた。
 漫画的に言うなら、天国の頭にはお怒りマークがニ、三個浮かんでいたに違いない。


「まだ話は終わってねぇんだよバカら。いいかよく聞け? そこで俺はこともあろうにお前のことを考えちまったんだっつーの!!!!」

「……何だって?」

「ああもう自分でも信じらんねーよ、そうともビックリの乙女回路に思考回路はショート寸前♪ ああそういや11に入ってんだよなこの曲隠しでさ〜、一回やったけど出来なかったからとりあえずの目標に……じゃなくてさ」

「落ち着け落ち着け。ナンキョクのキャラを自キャラにしてんのも知ってるから」

「ぎゃーお前なんでそんなん知ってんのー?! これが落ち着いていられるかー!!」


 明らかに話がズレている。
 が、当人たちにはいつものやり取りらしい。
 叫んだ天国がテーブルをちゃぶ台返しの要領で倒そうとしたのを、御柳は難なく押さえ込んだ。


「ヒートしすぎだっつの」

「お前ださせてんのは」

「ま、嬉しいからいーけどな、俺は」

「……ばか。ら」

「……取って付けたように言うな」



 何だかんだで、愛は地球を救う、のかも。








本屋で聞いた名前、部分は実話です。
最近は名前も多様化してますな。
でもこむぎちゃんってカワイイね。
カワイイけどアキバ系のアニメでそんなんあったよね(店の新譜案内でみた)

や、芭唐さんの名前は幼少時絶対色々言われたと思うのですよ。
子供って残酷だしね。
それを黙らせていたんだろうな〜…(遠い目)

途中にポプ的発言がありますが、やりたいってことでございます(笑)
ナンキョクは自キャラにはしてませんが曲が好き。
ギリギリ落としてるので今の目標ですとも。