日々徒然ときどきSS、のち散文 |
2004/05/09(日) |
[SS・ミスフルパラレル]天国の涯【ヘヴンズエンド】6 |
【ヴィシャス/Vicious】 「なあ、アマクニってどんな字書くん?」 「え? ああ…てんごく、だよ」 御柳の唐突な問いに、天国は首を傾げるようにしながら答える。 モノクロだった目に光が戻った。 その明るい茶色の虹彩に自分の姿が映るのを、何とはなしに心地いいと思う。 シーツを抱えたその指先が、ぎゅっと握り締められた。 白いシーツに、皺が寄る。 「天国だからヘヴンってわけか」 「うーん…まあそういうことにしとこうかな」 「何かあんの?」 「……どーでもいいじゃん」 目を逸らしながらの言葉は、それが言いたくないことなのだと言外に語っていて。 御柳は、それ以上の追求はしないでおくことにした。 これから同じ場所に暮らす以上、居心地は少しでもいいに越したことはない。 追求がなかったことに安堵してか、天国は一瞬目を伏せた。 伏せられた瞼を縁どる睫毛は存外に長い。 そのまま動かなければビスクドールにも見えるかもしれない、とどうでもいいことがふっと思考を掠めた。 「あんたは…そうだなぁ、ヴィシャス、かな」 「……は?」 「あれ、ダメだった? カッコいくね?」 伏せた目を開けた、と思ったら唐突に言われた。 何を言い出したのか合点の行かない御柳は思わず怪訝そうに眉を寄せる。 けれど天国はそんな御柳の心境など意に介した様子もなく、カッコイイと思うんだけどな〜、などと呟いている。 「カッコイイとか悪いとかじゃなくて、俺には御柳って名前があんだけど」 「いーじゃん。ってか呼び名をつけるのは俺の儀式だし。避けては通れませーん」 「それは威張って言うことじゃねーっしょ……」 ぴっと立てた人差し指を振りながら言う天国に、何だか疲れを感じてきた御柳は半ば投げ遣りに首を振った。 案の定、御柳の申し出は申請されることはなく。 「んー、でも直感でヴィシャスって閃いちまったからなぁ。他にどんなのがいいかねー……」 「……んで、ヴィシャスだよ?」 「切れ味の鋭いナイフ」 「あ?」 訳が分からない。 そう言いたげな御柳に、天国はにやりと口の端を上げた。 悪戯を仕掛けた、そんな顔で。 「アンタを最初に見た時、そんな感じがしたんだよ。よく切れる感じ?」 「……分っかんねぇな」 「俺は分かるからそれでいーんだ」 「言っとくけど、俺はお前をヘヴンとは呼ばねーからな」 百歩譲って、ヴィシャスと呼ばれるのは我慢するにしても。 そう言った御柳に、天国はなんでだと問う代わりに片眉を上げた。 「天国。そう呼ばせてもらうわ」 あまくに。 その名を口にしたその時。 そして御柳の言葉の意味を理解した時。 天国はハッキリと厭そうに顔を顰めた。 それを見た御柳は、一つは仕掛けることができたのだと思えて愉快で堪らなかった。 やられっぱなしは、性に合わない。 御柳さんの呼び名はヴィシャスでした、な話です。 何とか次回にはその他住人が出せそうでホッとしております。 どうしてそこに至るまでに6話もかかったのかしら…… ていうかさらりと名前呼びをするらしいですよ、御柳さん。 ラブなんですか?(笑) さてはて、Web拍手返信です。 5/8、1時の方。 お礼虎猿、楽しんで頂けたようで幸いです。 何気に虎さんは人気高いんですよね〜。うちのサイトでの登場回数は皆無に近いですが(笑えません) 拍手の方はサイトではあまり書かないようなCPに挑戦して見ようかな、と思っていたりしますので、また次がありましたら覗いてやってくださると嬉しいですv 天国の涯【ヘヴンズエンド】もなんだかんだで続いてますなぁ。 最初の1話を書いた時は続かせようとは思ってなかったんですけれども。 番外編も書いちゃってるし、段々愛着強くなってまいりました(笑/親ばかもいいところ) そのうちまとまったらASP部屋への移動も考慮中。 その他で移動させたい話も結構あるんすけどね…… 全然やってませんよ、やってませんとも(遠い目) や、日記からの再録より新作のが来てくださってる方にはいいだろうなぁと思うと移動作業の触手が止まるわけで。 言い訳くさっ。 ていうか言い訳以外の何物でもないわな。 くっ。 呪文は「逃げちゃダメだ!」です(笑)←効いてないやんけ |