日々徒然ときどきSS、のち散文
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2004/04/20(日)
SS・ミスフルパラレル]天国の涯【ヘヴンズエンド】4



【刹那のモノクロ】





「じゃ、肝心のアンタの部屋な」

 言って、天国は2号室へと歩を進める。
 その後を追いながら、御柳は廊下の突き当たりに階段があるのに気付く。
 先ほど上がってきた階段に比べると急で、狭い。

「なあ、あそこの階段は何?」

「屋上。何もないけど」

「ふーん」

 廊下は突き当たりで九十度に折れている。
 屋上へ続くという階段に並ぶようにして、ドアがあった。
 そこには【3】のプレート。
 3号室の右隣りには【4】のプレートが下げられていた。
 天国の涯に在る部屋は、4つらしい。

「あれ…なあ、階段の横にあるドアは何なわけ?」

 2号室のドアを開けて、中に入ろうとしていた天国を御柳はふと呼びとめた。
 屋上行きの階段の横、丁度2号室の右隣りにもう一つドアがある。
 階段の影に隠れるような、小さなドアだった。

 天国は御柳の言葉にゆっくりそのドアの方へ顔を向けて。
 何気なく天国の横顔を見た御柳は、その表情にどきりとした。
 天国の表情は、何もなかった。
 その目は確かに御柳の指し示したドアを映してはいるが、ただそれだけだ。

 モノクロ。

 そう表現するのが一番近いかもしれない。
 闇に沈んでいるわけでも、何もかもを拒絶しているわけでもない。
 ただ、見ているだけ。
 何の感情を抱くこともなく、ただその目を開いているだけ。
 そんな、目だった。


「0号室だよ。俺の部屋。ってか物置だけどな」

「へえ。……俺の部屋の、隣り?」

「夜這いならお断りだかんな〜」

「んなまだるっこしいことしなくても、直に襲ってやるよ」

 その気にさえなりゃあな。
 さらりとそんなことを口にした御柳に、天国が顔を引き攣らせる。

「げ、お前って見た目通りケダモノなのな」

「気に入ったのに関しちゃな」

「乱暴なのは嫌われるぜ? 女のコには優しくしなくちゃあな!」

 笑いながら言った天国には、既に先ほど見せたモノクロの目など欠片も残っていなかった。
 ともすれば見間違いだったのかとも思えるそれだが。
 一瞬だが背筋を走った冷たい感覚の名残が、それを現実のものだったと告げていた。


「ま、それはともかくさ。お部屋ご案内〜♪」

 ふるり、と頭を振って天国が言う。
 開けられたドア、視界に白が広がる。
 薄汚れた、けれど瞳を刺すには充分な色をした、白い壁。


 その白が、どうにも先ほど天国が見せたモノクロに重なる。
 目を細めた御柳は、天国に続いて2号室に足を踏み入れた。









細切れ連載、天国の涯第四段をお送りします。
1000文字というのはなかなかに細かくなってしまいますな。
ていうか昨夜書いた第三段が既に1500文字くらいだったのは内緒の話。

とりあえず3と4は天国の涯の間取り説明話でした。
なので会話少ない感じになってもた。

18日のWeb拍手で天国の涯をもっと読みたいと仰ってくださったお嬢さん(推定←や、男じゃねーだろよそりゃ…)に謹んで捧げさせていただきたく存じます。
ありがとうございました。まぢ浮かれます。元気でます。
ちうか流されやすいのでさくっと書いちゃいました(笑)

あー早く他の住人も出したいよー!!