日々徒然ときどきSS、のち散文
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2004/03/31(水)
SS・ミスフルパラレル]パラレル・ライフ。



 
パラレル・ライフ。
   
〜たとえばどこかの世界であったかもしれない話〜






「げ、コイツ毒持ちかよ?!」



 牙が掠った腕、その傷がぴりぴりと痺れるように痛む。
 顔を顰めた天国の肩を、司馬がぽんと叩いた。
 いい加減付き合いも長いせいで、司馬の言葉、音にはされないそれが分かる。
 俺が行くから毒抜いてきて、と。
 天国は叱られた子供のように眉を八の字に寄せ。

「悪い、すぐ戻るから」

 天国の言葉に、司馬は片手を上げて答える。
 司馬の、天国のそれよりか武骨な剣が、薄暗がりの中鈍い光を放った。
 後列に退いた天国に、子津が近寄ってくる。

「猿野くん、解毒呪文かけるっす」

「頼む。ってかちくしょ〜…キメラだなんて厄介だよな……」

 子津が呪文を詠唱しているのを聞きながら、天国はそう零した。
 傷からゆるゆると毒が抜けて行く。
 その感覚にふっと息をついていると、ふと隣りに辰羅川が立った。

「やはり、ここの屋敷は黒でしたね」

「なあ辰羅川、一回退いて体勢立て直した方がいくね? ついでに依頼主に報告にも行けるしさ」

「そうですね…攻撃性のあるキメラが多数いるとなると、多少契約内容も変わってきますからね」



 旅の途中で立ち寄った町、そこである依頼をされた。
 依頼主は、その町の町長だ。
 依頼の内容は「街の外れにある屋敷を調べて欲しい」とのことだった。

 詳しい話を聞くと、そこには屋敷の主人が一人で住んでいた。
 町の人間との関わりはほとんど持たず、時折食料を買う為に町に出てくる以外は屋敷にこもりきり。
 随分広い屋敷だというのに、手伝いの者も置かずに住んでいるのは人目に晒したくない研究をしているからだ、などと言う噂が流れたのも無理はない。
 度胸試しに屋敷の近くをうろついた子供が、屋敷の中からこの世のものとは思えない恐ろしい悲鳴を聞いた、というのは噂に拍車をかけた。

 街に住む人々が屋敷に極力関わらずに生活を送っていた、ある日のこと。
 その件の屋敷に、この小さな町には似つかわしくない豪華な装丁の馬車が入って行った。
 馬車は二晩ほど屋敷に滞在し、その後何事もなかったかのように去って行った。
 それが今から2ヶ月前の話だ。

 馬車に屋敷の主人が乗っていたのを、幾人かが目撃していた。
 いつ戻ってくるのか、それとももう戻ってこないのか、町の住人が密かに噂をしていた、そんな折。
 とある王国から、町長宛てに手紙が届けられた。
 差出人は、屋敷の主人だった。
 そこには、こちらに永住することになったので、屋敷を処分して欲しい、と書かれていた。

 しかし、前々からよくない噂の流れていた屋敷だ。
 ただ処分しろと言われても、住人たちは近寄りたがらない。
 焼却してしまおうという意見も出たのだが、中に何があるのか分からない以上迂闊に事を起こすのは得策ではないと退けられた。
 そこに丁度、天国たち一行が通りかかったのだ。




 そんなこんなで、今彼らは件の屋敷の中にいる。
 1階、2階ともに特に変わったところはなかったのだが、1階の書斎で隠し階段を発見した。
 地下に続くそれを下りると、事態は急変したのだ。
 キメラの出現。
 長い間世話をする主人がいなかったせいだろう、狂暴化したキメラは有無を言わさず襲いかかってきた。
 ここでようやく、冒頭へと繋がるのである。


「終わったっすよ、猿野くん」

「お、さんきゅ。っしゃ、行ってくるか」

「兄ちゃん、魔法援護いる〜?」

「様子見ててくれや、とりあえず」

「分かった」

 キメラの特性がまだ分からない以上、ヘタに魔法を打たない方がいい。
 そう判断した天国の言葉に、兎丸はこくりと頷いた。
 キメラ…合成獣、それは違法となる研究だ。
 屋敷の主人はそれを隠す為に人を遠ざけていたのだろう。

 天国は鞘から剣を抜くと、前に戻った。
 直接攻撃系の犬飼、司馬、天国が前、補助系や魔法を得意とする子津、兎丸、辰羅川が後列にいるのが彼らの基本隊形だ。

 キメラは二体。
 基本は豹だろう、そこに色々とかけ合わせたらしい。
 前足は鷲か何か、猛禽類のもので。
 その牙は、異様に長く伸びている。先ほど毒を食らったところからして、毒蛇か何かだろうか。
 胴体、首から腹、尾にかけては鱗で覆われている。
 極めつけは、その尾だ。先ほどは気付かなかった天国だが、よくよく見ればその尾は蛇だった。
 うねうねと動き、彼らを威嚇するように舌をちろちろと覗かせている。


「うだあああ、夢に出てきそうな外見しやがってぇぇぇ」

「うるせー、とりあえずとっとと終わらせるぞ」

「犬のくせして指図すんなぁ!」

 鳥肌の立ってしまった腕をさすりつつ、犬飼の言葉にしっかり反応して。
 天国は剣の柄を握り直した。
 応戦する犬飼と司馬の様子を伺いながら、プロテクト…防御力を高める魔法を詠唱する。

「気休め程度にしかならねーかもだけど、かけたかんなっ」


 二人に向かって言いながら、天国はキメラの一体に斬りつけた。
 その足を狙ったのだが、俊敏なキメラは攻撃の当たる直前に身を捻る。
 天国の剣が当たったのは、その胴体。
 鱗で覆われた、背中だった。
 がつ、と鈍い音がする。


「う、固ぇ?!」

 予想外の固さに天国が怯んだ一瞬。

「っ!!!」

 司馬が、横合いから天国を押した。
 息を呑むその音が聞こえて、こんな時にも喋らないのな、と悠長なことを考えた。
 その、刹那。
 耳元をひゅう、と風を切る音が通り過ぎる。

 次いで、どがっ、と何かが落ちるような音が足元から。
 見れば、キメラの尾…その蛇が目標物を失って床にその牙を突き立てていた。
 その冷たい黄色い目に、背筋がぞわりと震える。

「司馬! 猿野!」

 犬飼の、少し焦ったような声。
 それに意識を向ける間もなく、天国はその場から飛びのいていた。

「尾まで攻撃してくんのかよ、ざけやがってっ」

 悪態を吐くのは、それでも忘れない。
 剣を構え直しながら、天国は司馬の様子を伺った。

「司馬、悪い! 平気か?!」

 問えば、こくりと、頷きが返ってくる。
 それに安堵しながら、けれど天国の心の内には怒りが湧き上がってきていた。
 何でこんな奴相手に苦戦せなならんのじゃ、と。


「あーもー知るかっ、俺様キレちゃいましたー」

 宣言します、とばかりに天国が言う。

「さ、猿野くん?」

 驚いたらしい子津の声に、へらりと笑って。
 天国はぎろりと、キメラを睨みつけた。
 血が、滾るような感覚。
 天国の周りの空気が、ゆらめいた。
 次の瞬間、天国は床を蹴り、キメラとの間合いを詰める。

「魔法と剣の合わせ技、食らいやがれv」

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、キメラの胴体は真っ二つに裂かれていた。
 キメラに人間の言葉が分かるとも思えないが、少なくとも天国の言葉を理解するほどの間も与えられずに、キメラは絶命していた。
 天国の持つ剣、その刃の部分が炎に包まれている。
 魔法剣士、その特性を活かしての攻撃だ。


「兄ちゃん一人で活躍ってずるいな〜ってことで、僕も行っちゃうもんねっ!」

 ひょこん、と兎丸が前に踊り出る。
 残されたもう一体のキメラは、当惑していたようだがすぐに我に返り唸り声を上げた。
 兎丸は杖を掲げ、呪文詠唱の体勢に入っている。
 そんな兎丸を獲物に定めたのだろう、キメラがじりじりと兎丸との間合いを詰め出す。
 あと一飛びで爪が届く、そんな位置まで近付いた時。

「残念でーした。もう終わっちゃったしね♪」

 にっこり笑って、兎丸が杖の先端をキメラに向ける。
 その動きに、キメラがたじろいだ。

「封じろ、氷壁!!」

 どん、と鈍い音。
 同時に当たりの空気がひやりと冷え込んだ。

「おい、何やった…って、氷づけかよ……」

「彫像としての出来はイマイチかな、結構見た目グロテスクだし」

 けろりとした顔でそんなことを言い放つ兎丸を最強、いや最恐だと思ったのはその場にいた人間のどれだけだったか。
 キメラは、氷の中に閉じ込められていた。
 こちらも、天国が斬ったキメラと同じく何が起こったか分からないままだっただろう。

「あ、そうそう。はい、犬飼くん仕上げてね」

「……何?」

「どれだけ生命力あるのか分からないしさ。氷溶けても生きてたら面倒だし。ていうかさ、ここにこんなの置いてたら邪魔でしょ?」

 犬飼が兎丸に口で勝てるわけもなく。
 しぶしぶながら氷漬けキメラの前に立った犬飼は、溜め息とも気合いを入れているともつかぬ息を吐いた。


 風を切る、音。

 回し蹴り一発と、突きを5発。
 氷を粉々に砕くのに、犬飼が使った体術はそれだけだった。




「終わりましたか、それじゃあ1度出ましょう」

「あれ、そういや途中からいなかったよな? 何かあったのか?」

 奥…正確には彼らがここに入ってきた入り口の方から、辰羅川は歩いてきた。
 そういえば途中から姿が見えなかったことに、今更ながらに気付く。
 辰羅川は手にしていたチョークを皆に見せた。
 そのチョークには浄化作用があり、陣を書くのに適しているものだ。

「ええ、入り口に結界を張る準備を施しておりましてね」

「そっか、そのままにしてたら危ないもんね」

「思ってたより難関そうですしね、準備を万全にしてからまた参りましょう」

「そうっすね、それがいいっす」

「俺、プロテクトのもちっと質のいいヤツないか見てみるわ」

 満場一致、ということで。(2名ほど声を発していないが)
 6人は屋敷を後にするのだった。


 屋敷攻略までにこの後一週間の月日を費やしたり、貴重な書物・アイテムを発見したりとその経緯には色々あるのだが。

 とりあえず今回は、ここまで。





【セーブしますか?】








本誌RPG企画きねーん!!

ってわけで久々なRPGパラレルです。
サブタイトルをつけるなら【キメラの棲む館】とかかな。

やー、戦闘シーンが書きたかっただけなのに、なんだかやけに長くなってもた。
普通に戦闘だけ書けばいいのに、どうしてこうなったか、の経緯を説明したがるからいかんのじゃろうなぁ…(年寄りか)
しかも、キメラて。いちいち詳細まで説明してるし。しかも微妙にグロテスク〜(笑)
自分で考えといて何だが、尾の蛇は食事とかするのか? どうなんだ?←落ち着け

ていうかさ。
信也氏、ネットサーフィンどれだけしとんねん。
恐。恐っ。ぶるぶる(震)
ヘタにやったことのあるネタを原作でやられると震えますな。

原作では
十二支→猿野…勇者、兎丸…魔法使い、子津…見習い僧侶、犬飼冥…投手
華武黒翼団→屑桐…暗黒剣士、御柳…シーフ、白春…白魔導士、録…召喚士
ということらしいです。
十二支はドラクエ寄り、華武はFFよりとどこかの感想で書かれておりましたが、まさにそんな感じすな。


ちなみに自分設定↓
猿野…魔法剣士、子津…僧侶、犬飼…武道家、辰羅川…賢者、兎丸…魔法使い(黒魔導士)、司馬…剣士
屑桐…召還士(魔族、悪魔専門)、御柳…魔法剣士、録…盗賊、白春…精霊使い
となっております。

過去に3回ぐらいこの「パラレル・ライフ。」シリーズ書いてんですけどね。
華武側全然出てませんよ。
御柳さんだけですよ、出たの。
ちなみに録の職業にえらい悩んだ覚えがある。
剣士もいいかなーって。身の丈ぐらいのデッカイ剣を振り回す剣士。振り回してるのか振り回されてるのかっていう(笑)←結局司馬と被るのでやめた

他にも沢松が鍛治屋見習い、猪里が弓使い兼薬剤師、虎鉄が盗賊もしくは遊び人(笑)、蛇神がシャーマン(爆笑)とかメモには書いてありました。
墨蓮とか帥仙とかも面白そうなんだけどね〜。地味にアイテム師とかさ←ひでえ

ていうかね、なんかこのシリーズのメモとかえらい残ってて自分のことなのに驚き。
ちゃんと書きもしないのにー! みたいなね。←書けよ
職業の設定とか、個人の詳細とかちゃんと書いてあるんですよ、奥さん(誰やねん)


試しにジョブメモを引き出してみよう。(やめんか)
・魔法剣士→魔法も使える剣士。能力は平均的でバランスも良い。が、生粋の剣士に比べるとやや攻撃力は劣る。覚えられる魔法は攻撃、補助の初歩のみ。

・剣士→魔法は一切使用不可(マジックアイテムは可)。代わりに攻・防ともに能力が高い。速さも平均もしくはそれより高め。なので、魔力の資質がない者はこのジョブを選ぶことが多い。クリティカル率も高い。

・武道家→手数で勝負。攻・防は平均かやや低。速さの値が高く、1度の攻撃で連続になることがあるのも魅力。補助系や初期回復系の呪文を覚えられる。あまり一人旅向きではないので、パーティーを組んでからジョブチェンジする者が多い。


な、アホやろ?(嘲笑)
いやー、久々にメモを引き出したらこんなん出てきてビックリですよ。
書いちゃいましたが。バラしちゃいましたが。
ていうかこれ書いてる今が4/1なんですけどねっ。
あっはっはっはっ。