日々徒然ときどきSS、のち散文
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2004/03/12(金)
SS・ミスフルパラレル]天国の涯【ヘヴンズエンド】
 人は、哀しい。

 淋しい。


 ……だから、いとおしい。





天国の涯【ヘヴンズエンド】

告げる鐘の音はいつもただ密やかに



 かららん、と控えめな音でドアベルが鳴る。
 天国はコーヒーカップを洗う手を休めずに、ちらりとドアを見やった。
 狭い店内には、雨も手伝って他に客はいない。

「いらっしゃい」

 言うと、天国はまた視線を落とした。
 カチャン、と陶器と陶器が触れ合う音が響く。

 古ぼけた感のあるドアを押して入ってきたのは、一人の男だった。
 天国のそれよりも明るい茶の髪に、少々目つきは鋭いが整った顔立ち。
 目の下側を彩るように、朱のラインが引かれているのが印象的だ。
 着古したような灰色のコートを羽織り、片手に決して大きいとは言えない鞄を握っている。

 男は、ゆっくりと店内に足を踏み入れた。
 床板と靴底がぶつかり、こつこつと音を立てる。
 その背中で、ドアが音を立ててしまった。
 からん、ともう一度。ドアベルが鳴った。


「客、いねーんだ?」

 カウンター席、天国の目の前に座りながら、男が言う。
 思っていたよりも若いその声に、天国は少しばかり驚いた。
 耳に心地いい、テノール。

「辺鄙なトコだからな」

 遠慮のない物言いだが、不思議と不愉快な気分にはならなかった。
 実際、それが事実だったせいもあるのだろうけれど。
 傍らに置いてあるグラスを手に取り、ピッチャーの水を注ぎながら天国は答えた。
 水がグラスと触れ合う微かな音。
 この音は嫌いじゃないな、などと考えながら、天国は男の前にグラスを置いた。

「あー、確かにな。俺もここ探すの、手間取ったし」

「……注文は?」

「天国の涯【へヴンズエンド】へ行く切符を、一枚」


 男の言葉に、天国の肩がぴくりと揺れた。
 聞き返す代わりに、天国は男をジッと見据える。
 男はその視線を真正面から受け止め、もう一度繰り返した。

「天国の涯へ。案内して、もらえるんっしょ?」

 答えあぐねた天国が、男をただ見つめていると。
 かららん、と音がして、ドアが開いた。
 反射的にドアへと目を向けた天国は、安堵したような表情になる。

「雨脚が強くなって来たな…何だ、どうした?」

 入って来たのは、この店のオーナー屑桐だ。
 買い物から帰ってきた所らしく、片手にビニール袋を下げている。
 屑桐は、途惑うような表情の天国にすぐ気付いた。
 カウンター越しに荷物を渡しながら、天国の顔を覗き込んだ。

「オーナー、この人が……」

「天国の涯に、行きたいんだけど?」


 男は、三度その言葉を繰り返した。
 口元を、微かに歪めながら。

 天国の涯。

 久し振りに聞く、言葉だった。
 天国自身も、忘れかけていた。
 その言葉は、鍵。
 居場所をなくした、逃げてきた、諸々の事情のある人間たちが、隠れるため、或いは息を吐くその為にある、そんな鍵。

 天国は、渡された荷物を抱えたまま、ドアを見やった。
 普段は気にしたこともない、ドアベルの音。
 あれは、始まりを告げる音だったのだろうか。
 もしくは、終わりをも。

 自分が、あのドアを開けて入ってきた時も。
 やはり同じように、音をたてていたのだろうに違いない。

 ただ密やかに、告げる如く。




 この日。

 天国の涯に、新たな住人が加わった。




  END or START???







イエーイ。
映画、見てきました映画。
お母に付き合わされて、「ホテルビーナス」を。
そんでまたこういうのを書いてるしねっ(笑)
「黄泉がえり」の時も書いてたんですけど金沢サン?
あ、でもあの時より今回のが酷いなぁ(笑)だってパラレルってんもんな〜。←反省の色ナシ

いやでも、美味しいと思ったの。
イケルと思ったの。
一つ屋根の下で複数人が違和感なく暮らせる状況ってやつが!!!(落ち着け)

以下、即興で考えた設定。
予告+人物紹介な感じでお願いします(誰に言うとんじゃ)




『そのカフェの名は、Heaven's【へヴンズ】
 突き放すでも、必要以上に関わるでもなく、
 ただ、そこに当たり前に存在する場所。
 今日もまた、誰かがそのドアを開く。』


【0号室】…天国 呼び名「へヴン」
 へヴンズに住み込みで働く。
 基本的に人当たりはいいのだが、一線を踏み越えようとはしない。
 過去のことは一切謎。
 ここに来る前どこにいたのか、何故ここに来ることになったのか。
 それを知る人間はヘヴンズの住人にはいない。

「俺は、まあ……好きだけどさ、そういうの」



【1号室】…兎丸&司馬 呼び名・兎丸「アレグロ」、司馬「レント」
 兎丸は画家、司馬はピアニスト。
 同じ孤児院で暮らしていた二人だが、ある事件をきっかけに孤児院を出る。
 そうして流れついたのがヘヴンズだった。
 [司馬]ここに来る前に事故に遭い、司馬は左手が少し不自由。
 生活に支障はないが、ピアニストにとっては致命的らしい。
 そのことで心を閉ざしかけている。
 [兎丸]画家だが、名は知られていない。
 孤児院を出るきっかけになった事件のせいで、今はあまり絵を描きたくないらしい。
 だが、看板描きのバイトをするなどやはり絵への執着はあるようだ。

「……………」

「戻りたくない、絶対。戻りたくない」



【2号室】…御柳 呼び名「未定」
 新しくヘヴンズの住人になった。
 過去は謎、稼ぎ口も謎。
 だが家賃の支払いは滞納しない為、何かしらで稼いでいるらしい。
 時折恐ろしく冷たい目をすることがある、とは天国談。

「あ〜? ま、どーでもいーっしょ」



【3号室】…剣菱 呼び名「フルハウス」
 4年前ふらりと現れ、なんとなく居付くように住み出した。
 本人曰く「煩わしいことから逃げてきたんだ〜」とのこと。
 故郷にいる妹へ生活費の送金はかかさずしているが、自分の居場所は明かさない気らしい。
 大体にして笑顔だが、怒らせると誰より恐ろしい。

「大切だから、ってこともあるからね〜」



【4号室】…犬飼 呼び名「ヘル」
 地獄の番犬=ケルベロスから、天国がヘルと呼び出した。
 (その容姿から、立っているだけでボディーガード代わりになるから)
 無口であまり他人と接触したがらない。
 情報屋から簡単な仕事依頼を貰っては、それを受けている。
 それだけでは生活に困るはずなのだが……?

「他人のことだろ、放っとけよ……とりあえず」



【オーナー】…屑桐 呼び名「オーナー」
 ヘヴンズのオーナー。
 一見そうは見えないが、料理が得意。
 洞察力に鋭く、癖のある住人たちを抱えながらも上手くたち回っている。
 苦労も多いが、それを楽しんでいるふしもあり。
 天国をへヴンと呼び出した張本人。
 住人たちの動向を見守り、時には叱咤したりもする。
 本人は気付いていないが、その様はヘヴンズの住人たちの保護者である。

「コーヒーの淹れ方は、上手くなったな」



【その他】
 情報屋…黒豹 ヘヴンズへ定期的に出入りする、数少ない人間の一人。
  郵便配達、集荷、仕事の依頼などなど、なんでもこなす。

 ※呼び名は基本的に天国が使っているもの。




はーい。
そんなこんなで好き勝手書いてます、相変わらず。
はっはっはっ、楽しすぎだよこれ(ぉぃ)
いやでも、マジ楽しい。
「深き森の彼方」に続きまたも日記で書く好き勝手シリーズに加わったらどうしよう(無駄なことしてないでページ作ってUPしろよ)
シリーズ名は「天国の涯【ヘヴンズエンド】」だなっ♪

や、まぁどうなるか分かりませんけども。
でも楽しいんだよ〜。
一緒に暮らせるんだよっ??!
もー、めちゃくちゃ楽しそうぢゃないっ、美味しいじゃないっ!(そればっかりか)

つーか、いつどんな状況下でもネタに走ってしまう自分はどうなんだ……
映画見ながらこんなん考えてたんかい。
(実際には終わってエンディングロール見ながら考えてたんですけれども←あまり変わりませんよ)