日々徒然ときどきSS、のち散文 |
2004/01/21(水) |
[SS]おもいであるき(半オリジナル?) |
お も い で あ る き ――希望も絶望も、そこにはないのよ。 ただ、在るだけ。 存在が、魂が、在るがままに。 たったひとつ、それだけのこと。 波が寄せては返す、海。 海水浴にはまだ早い、早春。白い砂浜に、人影はない。 さく、さく、さく、さく。 そこに不意に響く、砂を踏みしめる音。 足音の主は、一人の女だった。 成熟した、とは言い難い。けれど少女と言うには大人びた顔立ち。 ごくごく平凡な顔立ちの女だったが、その目だけは違った。 その目は、まるでたくさんの歳月を過ごしてきたかのような色を湛えていた。 濁りのない湖のような、静かな。それでいて強い光を。 腰の少し上辺りまで伸ばされた髪は、結いもせず束ねもせずゆったりと背中に流されていた。 海から風が吹きつけるその度に、その長い髪が揺れる。 格好は、白いワンピースに薄紅色のカーディガン。 陽光を受けてはためくスカートが、目に眩しい。 片手に、おそらくはここまで履いてきたのであろうミュールを下げている。 女は、裸足だった。 まるで彼女の周りにだけ、春が訪れでもしているかのような錯覚を思わせるような出で立ち。 「ちょっと、寒いかな……」 潮風は、強く冷たい。 早春、とは名ばかりでまだまだ気温は低いのだから当然と言えるだろう。 呟いて、女は肩を竦めた。 波打ち際を裸足で歩くのには、まだ早い。 しかし呟きとは裏腹に、女は立ち去る素振りも見せずにゆっくりと歩を進めていた。 波が届くギリギリの、丁度乾いた砂と濡れた砂との境界辺りに、足跡を残しながら。 ふと、女が立ち止まる。 その目はまっすぐに海に向けられていた。 いや、その目は海のその彼方を見据えていた。 水平線の、もっとずっと向こうを。 肉眼では決して見えない、何かを。 今はとなりにいない貴方。 どうしているのか、私には分からないの。 ここから叫べば、声は届くの? 会いたいって呼んだら、会いに来てくれるの? 脳裏をよぎるのは、今はここにいない、愛しい人の面影。その姿。 思い出せる、その背中。 背中ばかりだというのも、なんだか淋しい気がしたけれど。 女は、その口元に柔らかな笑みを刻んでいた。 今は自分の知らない地平を歩んでいるであろうその姿に。 自分の与り知らない場所を歩む、その背に。 抱くのは、それでも愛しさ。 「ねえ、会いたいよ」 呟いて、女は一瞬目を伏せる。 それから、ゆっくりと目を開けるとまた歩き出した。 砂の上に、足跡を残して。 END わーい。 アホがおんで、ここに。アホが。 むしろ牙神風に「阿呆ゥが!」みたいなな。な。 これ何かって、2/18に出るPsycho le Cemu新譜「想い出歩記」を昨年末の大阪ライヴで聞いた時に脳裏に浮かんだ絵だったりします。 発売日と同時にやろうと思ってたんだけども え〜、つまり皆まで知れるその前にやっちまおう、ってわけです(笑) 何故だか分かりませんけれども、あの曲を聞いて浮かんだのはこういう絵だったのですよ。 波打ち際、足跡を残しながら歩く女の後ろ姿と。 全然違う場所、何処かの砂漠を歩く男の後ろ姿。 歌詞だってほとんど分からないのに(分からないから余計に想像力刺激されたんかも)、何故かそんな情景が頭の中に広がったのでした。 いやでも今月(2月号)のアリーナインタビューで作詞・Lida氏の思い浮かべた光景ってのが(引用はまずいので要約しまくると)「女の人が想い出を回想してる」っていうね。 あ、ちょっと被った?! みたいなね(爆笑) 何の因果か分からんけどねぇ…まぁ同じメロ聞いて思い浮かべるんだから、似たようなのになってもおかしかない……のかなぁ(段々自信なくなってくのは何故だ) まぁうちは別にシルクロードとか具体的な部分までは出ませんでしたが(笑とけ笑とけ〜) や、しかしマジメな話少しだけでも似たような絵が見れたってのは嬉しいっすよ。 ちうかそれと同じインタビュー内で「三蔵法師が乗っている白馬は元は龍っていうのを知らない人が多い」ってあったんだけどさ。 ……そうなん? ちうか自分普通にその設定知ってたんだけどもさ。 知らない人多いのか?? (だとしたら私はいつどこでその情報を手に入れたんだろうか) ま、いっか。 そんなこんなで、自分的「想い出歩記」でございました。 |