日々徒然ときどきSS、のち散文 |
2004/01/13(火) |
[SS・ミスフルパラレル]深き森の彼方「途惑いの中」 |
※懲りずに書きます、NIGHT HEADパロ。 今回は天国の過去でございます。 ほないってみよっ! 天国が牛尾の研究所に連れて来られたのは、6歳の時だ。 その日は、雨で。 灰色の雲が重く、のしかかるように空を染めていた。 白い糸のような雨が、静かに空と大地を繋いでいた。 そんなことを、天国は覚えている。 それ以外は、よく分からない。 天国が7歳になる夏、その直前の梅雨。 それまで過ごしていた世界から、天国は離別した。そうせざるを得なかった。 自我の芽生えと共に強さを増していく天国の能力は、力を持たない、それに対しての理解のない人々の中で平穏無事に暮らしていくことを、赦してはくれなかったのだ。 理解のできないもの。 異質なもの。 人はそれに恐怖を抱き、嫌悪し、時には自分の視界の外へ排除しようとさえする。 珍しいことじゃない。 ごく当たり前に、どこの世界でも行われていることだ。 そして、子供というものは。 純粋な分だけ、残酷に。 傷つけることも、壊すことも。 汚れのないようなその笑顔のまま、やってのけてしまえる生き物なのだ。 天国の力は、言わば「異質」に属するものだ。 そう、能力を持っていない、理解のできない人間から見れば。 天国自身にしてみれば、己の身に在る力は持って生まれたものであって、どうこうできるものではない。 それは、天国が天国として生まれたこと、それがどうにもできないことと同じように。 けれど、哀しきかな。今の社会において、天国のような能力を持った人間はごく少数で。 それがどうしても浮いてしまうこと、はみ出してしまうことは。 これもやはり、どうしようもないことだった。 小学校に上がって、他人との接触も増えて。 今までいた世界よりも、広い世界に出た天国を待ちうけていたのは。 説明のしようがない力への、迫害と疑心、それだった。 天国が牛尾の研究所へ行くことになった、その数週間前。 心ないクラスメートとの言い争いから、天国は。 己の能力で、他人を傷つけてしまっていた。 勿論、天国にそうしようという意思があったわけではない。 迸る力を、止めることができなかったのだ。 目に見えない力によって傷つけられたクラスメートは、決して重症ではなかった。転んでできた掠り傷、それと同じようなものだった。 また、幾人もの人間が天国が直接手を出していないことを見ていた為、天国自身にお咎めはなかった。 けれど。 その出来事は、天国の心にも。 周りで見ていた人間の心にも。 何か、消えない傷のようなものを刻んだ。 それまででも既にあった、天国と他人との間に出来ていた溝は。それをきっかけにして、ますます広く、深くなってしまったのだ。 山深く、見知らぬ人間と鉢合わせることのない牛尾の研究所。 そこは天国に、相反する二つの感情を抱かせた。 自分の能力が否定されない、力によって誰かを傷つけることのない安堵感と。 隔離されることでしか生きていけない自分、その能力への嫌悪感。 研究所と呼ばれている割に、見た目は別荘か豪邸にしか見えない屋敷を見ながら。 天国は、そんな気持ちを抱いていた。 その時の天国には、難しい言葉は分からなかったけれど。 ただ1つ分かったのは、自分に能力があるせいでこうなったのだということ。 それだけだった。 そしてそれは、天国に自身の持つ力への嫌悪感を抱かせるには、充分すぎるほどだった。 研究所での天国の生活は、そうして始まった。 あからさまに続きそうな終わりですが。 この後牛尾の研究所での生活が始まるわけです。 司馬っちとの出会いまで行かなかった…ていうか会話文すらねえし(汗) いやあの、続き書きますよ。 これここで終わったら…ねえ?(汗) いや時間なくてさー… |