日々徒然ときどきSS、のち散文
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2003/11/06(木)
散文]散文。その14



「天使になれないと嘆くその瞳に」

哀しいひとを見た

理不尽な言葉と態度を叩きつけられて
打ちのめされたその哀しい目を見た
やり場のない怒りと哀しみに彩られて
震える拳を見た


寂しいひとを見た

心を裂かれるような痛みに
涙も流せず呆然としていた
失ってしまったもののために泣けずに
その事実にまたも深い傷を負っていた


切ないひとを見た

大切なものを失って
どうしていいか分からずに
泣き濡れた目で座り込んでいた


優しいひとほど
心を打ちのめされやすくて
世界は非情なほどの早さで廻って

天使じゃないんだよ
ひとはどうしても
天使なばかりじゃないんだよ

だから
ねえ
そんなに哀しまないで
力のなさに自分を責めたりしないで

そうやって嘆くその瞳がね
誰より何より
キレイだってこと
天使に近いんだろうってこと

次に泣いたその時には
そうっと教えてあげるから






「きえないできえないで」

消えゆくものを見た
夕闇の中
薄暗い帳が世界を包む中で

震える腕
天を仰ぐ目
くたりと弛緩するカラダ

何かが消えるのは
どうしてこれほどまでに
苦しいのだろう

この身が引き裂かれる
ことはなくとも
心は
痛くて痛くて

お願いだよ
きえないで
いかないで

最後にもたげたその頭は
その眼は
一体何を見たの?
誰を呼んだの?

触れられなかった指先に
後悔ばかりが残るよ
寂しさが募るよ

せめて
この心の痛みが
それだけでも

零れた涙の雫が
一粒だけでも
アナタに届けば





「夢を見た」

夢は夢らしく
なんだかとてつもなく
突拍子もなかったけどね

体育館みたいな床
サーカスみたいなテント
桃色の象が玉乗りして
空には風船が揺れてた

楽しい場所だったけどね
ドキドキしたけどね
でも一番嬉しかったのは

アナタが手を握ってくれたから
なんだよ

背中に触れてくれたその手は
優しくて暖かかったよ

ねえ
また会おうね
今度はもっとずっと
一緒にいたいんだから

今度は握ったその手を
離さないつもりでいるから
夢の中から引っ張ってこれるくらいに