日々徒然ときどきSS、のち散文 |
2003/11/02(日) |
[SS・ミスフルパラレル]深き森の彼方 |
心というものはきっと、 果てのない迷宮。 逃れられないそれはまるで、 閉ざされた牢獄のようでもあり 無限に広がる宇宙のようでもある。 深 き 森 の 彼 方 「牛尾さん、俺、外に出たい」 天国はぽつりと、そう口にした。 窓の外をぼんやりと見つめながら。 けれどその目には、消しようもない光が宿っている。 天国の言葉に、牛尾は困ったように笑った。 「言っただろう? ちゃんと力を制御できるようになってからだって」 「俺、もうコントロールできる!」 「……本当かな?」 牛尾の言葉に、天国は眉を寄せる。 力の制御が完璧だとは、とても言い難かったからだ。 天国の力…サイコキネシスは、天国がそれを出そうと思わずとも能力を発動させる。 感情が昂ぶれば、それを意識せずとも勝手に何かが壊れる。 止めようと思っているのに、どうしようもない。 黙り込んだ天国を見て、牛尾は苦笑した。 牛尾とて、天国をいつまでもこのまま籠の鳥のように研究所に縛りつけておくのが正しい事だとは思っていない。 けれど、天国が己の力を完璧に制御できるようにならなければ、人ごみにぽんと爆弾を放り込むようなものなのだ。 その爆弾の威力が、ただの火炎瓶程度かそれとも核爆弾に匹敵するのか否かは、その時になるまで分からない。 天国の力は、それほどまでに強く、未知数なのだ。 「大丈夫、ちゃんと成長してるんだから、キミは」 「だって俺もう13だ! ここに来てから……」 天国の言いかけた言葉は、最後まで紡がれることはなかった。 ぱぁん、と乾いた音が背後から響いたからだ。 その音が何かは、天国が一番よく知っている。 肩を竦めながら恐々と後ろを向けば、やはり予想通りだった。 机の上に置かれていたグラスが、強い力を叩きつけられたように割れている。 ガラスの破片が、カタカタと揺れていた。 天国も牛尾も、言葉を忘れたかのように黙っている。 その目は、使い物にならなくなったグラスに注がれていた。 「猿野」 「……しば」 凍りついたようなその場の空気を動かしたのは、天国でも牛尾でもなかった。 小さな声、けれど凛とした透き通るような声がその場の空気を解いた。 ドアの隙間から顔を覗かせていたのは、司馬だった。 天国の強張っていた表情が、安堵した顔に変わる。 「もういいよ、司馬君と遊んでおいで」 「……ん」 伏せ目がちに頷いた天国は、年よりずっと幼く見えて。 司馬は牛尾に向かって軽く頭を下げると、天国の手を引いて出ていった。 「どうすればいいんだろうね……」 呟かれた言葉の答えは、どこにもなく。 夜の帳の降り始めた窓の外に目をやりながら、牛尾は溜め息を吐いた。 割れたグラスの破片を手に取り、ふと目を伏せた。 ■END■ 牛尾=御厨で。 超能力研究所での一場面。 御厨と直人みたいに険悪じゃないけどね。 牛尾と司馬は遠縁です。 天国は全然↑とは血が繋がってません。 天国が連れてこられた経緯は原作と一緒です。能力が強過ぎて日常生活が困難だったので、研究所に収容されたのね。 ていうか犬飼氏の誕生日なのに全然祝ってないぞこの日記(爆) あれー? いや、なんでか書きたくなっちゃって、超能力パラレル。 |