日々徒然ときどきSS、のち散文
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2003/10/12(日)
[SS・ミスフル]矛盾と相互理解の果ての(犬猿…犬猿犬?笑)


矛盾と相互理解の果ての



「付き合おっか、俺たち」


 だーいすき。

 なだけじゃあいられないってこと。


 分かってんだろ。本当はさ。

 お前も。


 俺がそう切り出したのは。
 某有名ドーナツ屋で向かい合いながら話をするともなくしている時だった。
 俺たちの間を隔てている机の上には、ノートやら教科書やらが広げてある。

 今日は、お馴染み一年6人(俺こと猿野天国様、子津っちゅ、スバガキ、司馬、辰さん、ガン黒ワンコ)で勉強会だったわけで。
 元々図書館でやってたんだけど、閉館時間でお開きになって。
 しかしながらワンコにノートを借してた俺は、仕方なしに勉強会・続になだれ込むことになったわけだ。
 んで、なんだかもうイイ感じに頭の中身がぐだぐだになって来た頃に、俺が冒頭の一言を言ったってーわけ。



 んで。
 返ってきたのは……
 沈黙かい。
 ま、予想してたけどさ。

「そこ違うっつの」

「……あ?」

 とん、と持っていたシャーペンの先で間違った箇所を指し示してやった。
 それに対しても反応遅いし。
 あーあ、突発的事象に弱いって、ピッチャーとして結構致命的じゃねーの?
 辰羅川よ、お前はよくぞまぁこんなんとバッテリーを組んでやろうと……って話逸れてんな。

「写すだけなのになんで間違えるかね、眼球のピント合ってます?」

 もーいい加減俺も眠いし。
 疲れたし。
 帰って風呂入ってTVも見たいわけだし。
 いい加減ギャグにもキレが出なくなってきてるのを自覚してたから(大体コイツ相手だと今時ありえないような笑いのツボだったりするんで難しいんだ、これが案外)、ギャグなしで突っ込んでやる。

 あ、つかその顔やめれよ。
 無茶苦茶情けないし。
 あのさ。
 犬耳が下がって、尻尾もだる〜ん、ってなってんのが見えちまうわけよ、俺には。
 大型犬が怒られてしょんぼりしてる図、ってーのは俺的には犯罪的だと思うんだ。
 あの可愛さつったらもう、誰でもムツゴロウさんになれちまうぜおい、みたいな。な。
 いやもうそんな誰に求めてんのか分からない同意は置いておくとしてだ。

 ともかくまぁ、情けない顔の犬飼ってーのは、俺的にあーもーしょーがねえなーもう。って気分にさせられちまうんだ。
 だからヤなんだ。
 こんなんぜってぇ他人様に知られるわけにはいかねぇ。
 勿論目の前の駄犬本人にも、だ。そんなの論外だ。

「手が止まってんぞ、ワンコ」

 言ってやれば、慌ててノートを引き寄せた。
 てか顔赤いし。
 赤いっつか元々の黒に赤が足されて微妙な色なんですが。
 どうよ。ねえ、これってどうなのよ。
 あ〜、進み遅っ。ドーナツ食ってやれ。

 ちなみに今の俺のお気に入りは『もちもち新食感がウリ★』のポン・デ・リ●グだったりする。
 んー、でもさっき食べた夏みかんはイマイチだった。
 やっぱノーマルか黒糖が一番だな、ポンは。
 これで俺が食っちまって、ワンコの皿からもドーナツが消えた。
 ……お前、最初に食ったオールド●ァッションだけじゃね? 食えたの。
 まぁ俺が食っちまったからなんだけどさ。

「猿……」

 だぁ!
 そッの情けねぇ声やめやがれ!
 思わずシシカバ先輩の生霊が乗り移っちまったじゃねえかよ。

「んだよ。今の俺はギャグも埃も出てこねえほどお疲れだ。ついでに不機嫌だ。誰かさんのせいで帰るに帰れないしな。ああもうだからまた間違ってるって言ってんのにさっきも言ったトコ直してねぇし、何、喧嘩売ってんのお前? そんでお前が間違ったまま写して間違った答えをテスト用紙に書こうものならその間違いは俺の所為にされるんだろ、そうだろう? 冗談じゃねーさっさとかつ間違いなく写せ。可能な限り早く、A.S.A.Pだ! ああもうそんな話はもういいや。てか俺一人に喋らせてねぇで何か言ったら?」

 ノンブレスです。
 我ながら肺活量と舌の回り具合には感心しちまうね、オイ。
 ……で。
 またそこで黙るし。
 なんなんだよ、もう。
 知ってるよ、お前が無口じゃなくて口下手なことぐらい。
 何言っていいか分からなくて。そんで必然的に無口になっちまってることぐらい。
 分かってっけど、聞きたくなることもあんじゃんよ。
 そういうのが人情ってもんでしょーよ。
 なあ、ちょいとオニイサン、黙らないでおくんなさいよ。

「………さっきの」

「さっきってどのさっきだよ。てか間違ったとこ直せよ、お前の口癖じゃねぇけど、とりあえずさぁ」

「……どこ」

「こーこ」

 俺のシャーペンは指示棒になってしまった、もうすっかり。ここ何十分かで。
 本来の役割が放棄されてしまってから久しい。
 ああ哀れな。
 ヘタレ犬がヘタレなばっかりに。
 後で責任とってもらえ、あのワンコに。な。

 ミス●(ああ店名だしちまったけどまぁいいや)は、結構いろんな人が来る。
 OLからおばちゃんから俺らみたいな学生、カップルは勿論のことスーツ姿のリーマンのおっちゃんまでいる。
 コーヒーにすりゃおかわり自由だし、席は二人がけとかの小さいのが多いし、で色々便利なんだろうな。
 俺、結構人間観察って好きだ。

 ああ、目の前のワンコが一生懸命間違いを正してる。
 んでもまた間違ってっけど。
 スペルが違うスペルが。nを抜かすな。
 ……ホンット、英語ダメなのなお前。
 基本的に単語を覚えられてねぇものとみた。
 どーでもいいっちゃどーでもいいが。

「さっき、言ったことだが」

 おお、メゲねえし。
 ヘタレだとばかり思っていたが悪あがきするくらいの根性はあったわけか。
 ふむふむなるほど。立派立派。

「だから、さっきって何」

 顔を顰めて、至極不機嫌です、な表情でそう返してやったら。
 きゅ、と眉間に皺が寄るのが見えた。
 怒りたいのか、悲しみたいのか、自分でも分からずにどうしようもなくなっている、そんな顔だ。
 この犬は犬のくせしてそんな複雑な表情をしたりする。
 生意気にも、よく俺の前で、だ。

「……ぅ」

「お前……」

 色々色々、考えたんだろう。
 コイツはコイツなりに。
 でもさぁ、その挙句に出てきたのが言葉にもなってない、呻き声ですか。
 そんなん、百年の恋も冷める勢いだと思うんですが。どうですか。
 間違ってますか、俺。
 中にはそういうのがいい、なんつー屈折した好みをお持ちの方もいらしゃると思いはしますが、生憎俺は普通なんです。
 あー、そういやいっつもいっつも飽きもせずコイツを追いかけてる女のコらは、どうなんだろ。これでもいーって言うのかね、やっぱ。
 それともやっぱ、理想と違ったら切り捨てちまうんかね。
 ま、そんなん知る由もねーけどな。

「とりあえず……好きだ」

「ま、上出来なんじゃん?」

 顔赤黒いけどな、お前。
 ついでに言えば俺のさっきの言葉の答えには、びみょ〜になってない気がすんだけどな。
 色気ねぇな、俺たち。
 甘いモンで満たされた場所にいんのにな。
 でも、大好き、なんてだけじゃねーもんな。
 だって餓えてっからさ。
 見てるだけ、なんてので満足できるわけねーじゃん。
 ホラ、若いしね俺ら。

 この気持ちは、多分もっとずっと複雑で難解で、多分他人様から見ればとてつもなく矛盾しまくりのもんなんだろうと思うけどさ。
 そんでも、それを抱えてやろうと思ったわけよ。
 俺はホラ、心が広いからな。
 てかさ、捨てらんねーから。この気持ちも、お前の想いも。
 抱えるしかない気持ちなら、とことんまで付き合ってやろーと思ったわけだ。


 …で、どーでもいいことかもしんねーけど。

「また間違ってるっつの。いい加減にしろ」

 ……答えが出ないのなんて、この気持ちだけで充分なんです。
 コレ以上重荷増やさないでください、ヘタレ犬。

 もーいいから。
 分かったから。
 早く直せ、それ。



END




あ り え ね え 

なんじゃこりゃ。
一人称はやっぱり難しいのでげす。
文字数膨れ上がるし。
しかもそこはかとなく犬飼が…(自己規制)
いや、本誌で犬猿久々のオイシイ接点があったもんでね。
ちうか手首掴むのって私的萌えポイント(笑)なので思わず犬飼氏を書きたくなってみた。←日本語おかしいです。いつもです。

まあ何が言いたいかってさ。
友達とぐだぐだ駄弁るのは楽しいよー、ってわけさ。
ポンに対する猿の見解は私の見解でもあるわけさ。
でも最近パイやらマフィンやらの新作に押されて出てる数が少ない、ポン。切ない。
しっかしミス●はホントいろんな人くるよなー。

っていう。
日常っぽいことを書きたかったわけさ。
どこか一欠けらでも日常感じたような、そういうのが書きたいわけですわ。

ぷー。
「ピロッポ」見よう。
あれは頭が空っぽになるので好きだ。
おそらく知らない人大多数(爆笑)