日々徒然ときどきSS、のち散文
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2004/07/15(火)
SS]秋の日、秋空、秋茜(ピンポン/邦画版)


「スマイルー」

「……ぺコ」

 本屋の帰り道。
 聞き慣れた声が、鼓膜を揺らした。

「お使いご苦労! てか何買ったんー?」

「新書。多分ぺコは興味ないと思うけど」

 などと言いつつも袋の封を開け、中身を見せる辺りがいかにも律儀で。
 ぺコはそれを覗き見て、うへえ、と何とも言えない顔つきになった。
 袋の中身は、最近名前が売れ出した新進気鋭の作家の、推理小説だった。

「その作家の、昔から好きだよなー?」

「うん」

「こないだ本屋で山積みになってて、ビビッタ」

 言いながらぺコは手を上と下にぐおー、と広げてみせる。
 誇張表現は、ぺコの得意技の一つだ。
 けれどそれでいて不思議と憎まれないのは、人徳の為せる技か。

「んでもあれだな、自分の好きだったもんが流行るってーのは嬉しいけどちょっと複雑だな。自分だけのお気に入りにしときたかったー!! …みたいな。そういう気持ちにならん?」

 対するスマイルの表情は相変わらず変わらないが。
 けれど、その顔にはいつもよりどこかしら嬉しそうな雰囲気が漂っていた。
 それを目にしたぺコは、にひひ、と何とも形容しがたい笑みを零す。

 スマイルは、笑わない。
 笑わないどころか、滅多なことでは表情を変えない。
 眼鏡の奥の冷めた瞳が感情で揺らぐことを見た者など、ごく僅かしかいない。
 幼い頃からその調子だったから、イジメの対象になったこともある。
 異端なものに対する接し方は、子供の方がよほど残酷だ。

 けれど。
 ぺコは、知っていた。
 スマイルは笑わないけれど、ただそれだけだ。
 ちゃんと喋るし、食べるし、生きてる。
 言葉は少ないけれど、返事もしてくれる。(気が向いたら)
 それで充分だ。
 そう、思う。

 何より、ぺコにはスマイルの気持ちがちゃんと分かるから。
 嬉しそうな時、哀しそうな時、機嫌が悪い時。
 理屈ではなく、肌で分かる感じ。

「何たってホラ俺、ヒーローだから★」

 言って、指を振る。
 スマイルは突然なぺコの物言いには慣れているらしく、曖昧に頷いた。
 その唇の端が、笑みには程遠いけれど微かに緩んでいるのに、ぺコはまた笑う。

「うおー、でっけー夕日! ホラ見ろ、スマイル、見ろ!」

 促されるまま目をやれば、そこには確かに見事なほど茜色な陽があった。
 西日に照らされて、何もかもが茜色に染め上げられて行く。
 視線を落とした自分の手も服も、同じ色に染まっていた。
 ふと横を見れば、ぺコの横顔も同じ色で。

「あーきのゆーうーひー、にー♪」

 唐突に歌い出したぺコに、けれどスマイルは何を言うでもなく。
 少し調子の外れたその音も、耳に馴染んで長い。

「やっぱ夕日は秋だよなー。うんうん」

 ゆっくり、ゆっくりと。
 けれど確実に沈み行く太陽。
 時の流れを肌で感じて、スマイルはふと眉間に皺を寄せた。

 来年の今頃は、どうしているだろう。

 そんな考えが突然脳裏をよぎったから。
 思わず、本を抱えた手に力が込められる。

「んー、来年も見ようなー、こういうのっ」

「……うん」

 たとえばそれが、何気ない言葉でしかなくても。

 嬉しいと思える事。

 それが、大事なこと。


◇END◇







…何があったんですか金沢さん。
何で今更ピンポンなんですか。

正解:DVDレンタルしてきたから。


そんなこんなでピンポンです。
ええ、誰が何と言おうとも押し切りますよ。
しかも原作漫画読んでないのに書きやがりましたよこいつ。
はい、邦画ピンポンです。
それしか言えません。
だって頭の中で動いてたの映画版の人だったし(最低)

とりあえず、ぺコとスマイルです。
作中だけだと分かりませんが、中3の秋で。
進路だなんだ言われ始めてる頃だと思ったってください。
好きな言葉は捏造です(笑)

ま、感想代わりのSSってことで。
そこそこ面白かったっすー♪


はてさて、今日のアンケ報告。
相変わらずエロがダントツで面白いです。
うーわー。
なんだ、皆エロに飢えてるのか?!(笑)

そんなかんじで、明日もまったりいきましょやー。
これからレンタルDVD2本目見ます。
「珍獣島のチョッパー王国」です(わろとけわろとけー)

こうね、最近気付いたんすけどね……
ワンピ燃えがしないのって、原作でサンジ君いなかったからどうにもならなかった、みたいな(笑)
久々にドラム王国編読み直したら全然いけたもん。
くそー、アニメでもいいから何か燃えを!!←逝ってこい
じゃないと書けないよぅ……
てかどうしてワンピはミスフルと違って捏造できないのか……