日々徒然ときどきSS、のち散文
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2004/06/25(水)
SS]こんなんも、ありでしょ?(趣味。KOF)


「ねーえ、草薙は出るのよねえ?」

 唐突に言ったのは、シェルミーだ。
 何のことだか分からず、京は銜えていた煙草を灰皿に押しつけつつ、首を傾げた。

「いきなり何の話だ?」

「SNK VS CAPCOM(仮。以下SVC)の話」

「ああ、あれな。出るけど」

 そういやあれって学ランでだっけか。
 うわ、出してくるの面倒だな。
 ……の前にどこに入れたっけ…?

 新たな煙草を取り出そうとポケットを漁って、けれど先ほどのが最後の一本だったことに気付く。
 一瞬眉を寄せたが、すぐにどうでもいいと思い直した。
 別に依存症なわけではなし、ないならないで構わないのだ。

「てか八神も出んだよなー?」

「そういう話らしいがな」

「お前、いい加減服替えねーの? バンドマンなんだし、ないわけじゃないんだろ?」

「……大きなお世話だ。というより、それは俺ではなく開発会社に言え

 今もまた、バンド関係らしく譜面にペンを走らせて言る庵は、にべもなくそう言った。
 庵の言葉に、京はそりゃそーだわな、と笑っている。
 何がそんなにおかしいんだか、と庵が肩を竦めたのには、どうやら気付かなかったらしい。

「ねえ、SVCに吸血鬼出るって本当?」

 
ぴしっ。

 シェルミーの言葉に、空気が固まる。
 先の怪音は、空気が凍りついた音と庵が握っていたペンを折った音の二重奏だったらしい。

「デミトリな、デミトリ」

「そうそう、そんな名前だったわね、確か」

「凄いよねー、妖怪まで参戦しちゃうなんてさ〜」

 KOF97においてオロチを憑依(とはまた違うのか?)させた事実など知らぬフリで、クリスは言う。
 ちなみにデミトリの名を告げたのは七枷社だ。
 オロチチーム、見参。


「……何なら代わるかよ」

 やっとのことで、という様子で声を絞り出したのは、京。
 立ち直りは京の方が早かったらしい。
 しかしドスの効いた声とは裏腹、その口元には薄ら笑いが浮かんでいる。
 心なしか蒼褪めた顔と、その表情と、声音とが。
 妙にマッチしていて、恐い。

 そう思ったのは、多分社もシェルミーもクリスも同時にだった。


「な、なんだよ。せーっかく出場できんだろ? 嬉しくねーのか?」

「「嬉 し い わ け あ る か」」

「うわ、すごいね二人とも。息ピッタリ」

「ツッコミどころはそこじゃねえ!!」

 七拾五式改・強かましてから鬼焼きで燃すぞコラ。
 口にはしていないが、京の目はそう語っていた。
 けれどクリスは慣れたもの、くすくす笑っていたりする。

 だーって、EDITで何度もチーム組まされたもんね。
 いい加減慣れもするって。
 と、いうのがクリスの心境。

「冗ッ談じゃねんだよ、あの吸血鬼! オフィシャルでやりやがった!!」

「あ」

 額に青筋浮かべつつ心底イヤそうに言った京を見て。
 社が何かに納得した様にぽん、と手を打った。
 シェルミーとクリスは未だに話が分からないらしく、話を促すように社に視線を送る。
 社は半笑いを浮かべつつ、二人に説明しだした。

「あのな、デミトリにはミッドナイトブリスっつー、まぁKOFでいや超必みたいな技持ってやがんだよ」

「ブリス? ブレスじゃなくて?」

「細かいことは知らねーって。CAPCOMにでも聞いてくれ」

「何、その技がヤバイんだ?」

「いや、ヤバイっつーか、何つーか……」

 言いあぐね、社は京と庵にチラリと視線を送る。
 けれど二人とも話す気はなさそうで。
 ま、そりゃーそうだろうな。
 俺だってゴメン被りてーし。
 ……ってかこの反応、食らったな、ミッドナイトブリス……

「何よ、早く言いなさいよ」

「だぁから、その技ってーのがな、食らった相手を自分好みの美女にして血ぃ吸っちまうってー技なんだよ。男なら女体化、女ならコスプレだったり成長だったり、とかそういうノリでな」



 
・・・・・・・・・・




「あはははは! 何それ何それー!!」

「食らったの、食らったのね?! いやぁん、見たかったわぁ〜」

 一瞬の沈黙、後爆笑。
 社は自分がその技を食らった時のことを想像してしまったので笑うに笑えず。
 結果シェルミーとクリスが爆笑することとなった。
 のだが。
 この二人、明晰さも手伝ってか相手の心を抉るような言葉を吐くのが得意だったりするのだ。
 下手に言い返せば逆に自分が撃沈しかねない。
 それが分かっているせいか、京も庵も沈黙を保っていた。

 ……が。

 生来気の長い方ではない京が、唐突に立ちあがった。
 ぷちり、という音と共に。

 あ〜あ、キレたよ。
 まぁ、分からんでもねーけどな。
 しかし草薙、相手が悪いぜ。
 この二人じゃぁよぉ……
 (俺でも勝てねーし)

 いや、貴方はあからさまに尻にしかれているでしょう、普段から。
 と、口に出していたのならそうきっかり突っ込まれていたであろうことを、社は内心で呟いた。

「笑い事じゃねーっつーの!!」

「いや、だって他人事だしね。ねえシェルミー?」

「いいじゃなーい、アナザーストライカーで京子ちゃんとか出たんだから」

「ア レ は 俺 じ ゃ ね え !」

 どうやら、禁句らしい。
 京子、という言葉を聞いた瞬間京の顔がひくりと引き攣った。

「何だって俺ばっかこんな目に遭うんだっつーの! シンボルだからっていつまでも学ランは着せられてるわ、年とらねーせいで毎回毎回留年だ留年だ言われるし。うっせー俺だって好きで着てんじゃねぇっての。替えたら誰だか分かんねーとか言われるしなんだそりゃ、お前らは顔じゃなく服で個人を判断してんのかって問い詰めたいね、小一時間ほど!!」

 マシンガントーク、炸裂。
 どうやら京は完璧キレタらしい。
 そのマシンガンっぷりは明石●さんまもかくや、だ。
 口を挟む隙間などなく。
 結果、シェルミーとクリスどころか社も庵もそれを聞くしかなくなった。
 一瞬息を吸うために言葉が途切れたが、しかし。

「どーでもいいけど勝ち台詞の"燃えたろ?"のせいで"燃え太郎"とか妙な呼び名する奴いるし。てかどっかだかで同じ名前のストーブ、しかも薪使用のが売ってるって聞いた時には流石に脱力したね、俺は。96で飛び道具なくなったらそれでも主人公かとか散々言われるし、余計なお世話だ庵と全く性能が同じじゃ先行きに限界が来るってーの考えてみりゃすぐ分かんだろーがこのトリ頭。飛び道具なきゃ主人公失格だなんてルールがいつ何時できたかきっちり納得いくように説明しやがれっての。そんで99になって主役交代だ? いや別にそれはいいけどよ。それでようやく話の本筋から解放されたーとか思いきや何だオイ、全然じゃねーか冗談じゃねーっての。クローンとか言ってなんじゃそらふざけんなよな。人を勝手に大量生産してんじゃねーよ」

「いや、あのな、お前の言うことも分からんでもないが……」

「主役っていうのはそういうものでしょー?」

 一段落ついたのか、京が黙ると。
 珍しくも引き攣った庵がフォローだかなんだか分からない言葉を紡いだ。
 次いで、シェルミーが言う。ちっとも同情の欠片もしていない口調で。

「挙句の果てに女体化ってなんだそりゃ。京子の時も散々言われたっつーの。あれは名前にコスプレイヤーって入ってたからまだ良かったけど。お前はまだいいじゃねーか、八神。ネオポケのギャルズファイターズでマジ庵子やってたの忘れたとは言わせねーぞ。あの紫のセーラーどこから支給されたんだよ、つうかユキが未だにあの写真持ってんだがお前何とかしてくんね? 見るたびすっげー微妙な気になんだよあれ。……ってか。オフィシャルで同人腐女子のようなことやっていいのかプレ●モア!!」

「積もり積もった積年が一気にあふれ出た感じだね〜」

「ってか草薙マジで食らったのか、ミッドナイトブリス」












「俺じゃなくて八神がな!!」











・・・・・・・・・・・



 う〜わ〜。
 三人の目が一気に庵に集中した。
 まさか矛先がそう来るとは思っていなかったらしい、庵は固まっている。

「生で庵子拝んじゃったんだ……」

「そりゃせつねぇわ……」

「色々思う所も出てくるわよねぇ……」

「……だよな」


「貴様ら、オチがこれかーっ!!??」



 ……合掌。

 明日に幸あれ、戦士たちよ。


◇END◇






お遊び〜。
色々本音が入ってます。
風呂入ってる時に京の長台詞が浮かんだので書いてみた(笑)
いや、それだけミッドナイトブリスが驚嘆したんだよってことで……
だってマジにオフィシャルで来るとは思わんかってん。
来たら嬉しいとは言ってたけどある意味複雑。