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日々徒然ときどきSS、のち散文
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2003/03/02(日)
[SS・ミスフル]融ける言葉、触れる心(馬猿)



 
一緒になったのは、偶然だった。

「あっれ、珍しい……司馬、一人か?」



   
融ける言葉、触れる心


 昼休み。
 場所は中庭。
 司馬に声をかけたのは、天国だった。
 声をかけられた司馬は、こくりと頷いてみせる。
 天国はそんな司馬の傍に寄ってくると、隣りにすとんと座り込んだ。

「俺もさ〜、沢松が部活の集まりでいねんだ。一緒してもいっか?」
 既に隣りに座り込んでおいて聞く言葉ではない気がしたが、それでも頷けば、天国はパッと嬉しげな表情になる。
 人懐こい子犬を思わせるようなそれに、司馬はふっと微笑した。
 天国はというと、弁当の蓋をあけるのに夢中になっていてそれに気付かずに。

 いただきます、と言いながらちゃんと両手を合わせているのが、天国の性格を物語っているようで。
 司馬はそんな天国の姿を見つつ、自分も手にしていたパンを口に運んだ。


「司馬、それ購買?」
 ふるふる、首を横に振る。
「あ、じゃあコンビニか」
 こくり、頷く。
「ふーん、どこの?」

 首を傾げる天国に、横にあったビニール袋を差し出す。
 天国はそれを受け取り、少し眺めてから司馬に返した。
 それからまた、もくもくと食べ始める。
 場に訪れるのは、沈黙。

 もくもくもくもく。

「司馬さぁ」
 天国が再び口を開いたのは、半分ほど弁当を食べ終えたところで。
「楽しいか?」
 何が、とは敢えて言わずに。
 ただそれだけを、聞いた。

 司馬は、しばらく何か考えるように天国を凝視していたが。
 やがて、こくりと頷いた。小さく、けれど確かに。

「そっか」
 何が聞きたかったのかなんて、天国自身にもよく分からなかったのだけれど。
 司馬が頷いたから、それだけでいいような気がした。
 それだけでいいと、そう思えた。

「え、何だ?」
 何だか凄く暖かい気分になって。
 嬉しい気持ちでいると、ふと司馬が自分を見つめているのに気付いた。
 何が言いたいんだろう、と天国が首を傾げると。
「? 何……」
 言い終える前にすい、と伸ばされたのは司馬の腕。
 天国は驚いて、反射的に目を伏せてしまう。
 司馬が笑った気がしたけれど、閉じた瞼の裏からはそれを確認することはできなかった。

 とん、と司馬の指先が触れたのは天国の唇の端で。
「な、なんだ?」
 途惑いつつ目を開けると、目の前に差し出された司馬の指先には、ご飯粒があって。
「あ、取ってくれたんか。さんきゅー」
 焦りつつ、ちゃんと頭を下げる。
 なんだかんだ言っても、天国は律儀な性格をしているのだ。
 司馬はそんな天国を見て、ふっと笑い。
「あ! ちょ、何やってんだよ!」
 天国が焦って声を上げたのは、司馬がご飯粒をぱくりと食べてしまったからだ。

「あ〜あ〜あ〜、何やってんだよ、何で食っちまうわけ〜?」
 くしゃくしゃ、と髪をかき乱しつつ、天国は赤くなった顔をぱたぱたと手で扇いだ。
 司馬は困ったように眉を寄せ、首を傾げている。
「や、別に責めてるわけじゃねーし。ただ驚いただけで」
 顔熱い〜、などと言いながら天国は頬に集まった熱を逃がそうとしている。
 司馬はそんな天国を見て、困ったようにけれど楽しげに笑んだ。


「……俺、司馬のこと何考えてっか分からんヤツだと思ってたけど」
 流石に笑われているのに気付いた天国は、ジトッと司馬を睨み。

「司馬ってけっこー、ムッツリだろ」

 べえ、と舌を出しながら天国は言ってのけ。



 …でも、癖になるかも。

 内心での呟きは、内緒にしておいたのだけれど。




◆END◆




わー。中途半端!!
あっはっはっは、駄目じゃん!!
久々の馬猿がこんな駄文でごめんなさーい。
だって今マイブーム芭猿なんだもん…(死ね